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アニメCGの転換点、荒牧伸志・前田真宏監督が回想

【FREE】アニメCGの転換点、荒牧伸志・前田真宏監督が回想

2025年03月20日
荒牧監督(左)と前田監督(右) 荒牧監督(左)と前田監督(右)

 第3回新潟国際アニメーション映画祭期間中の15日、シネ・ウインドでオールナイト上映「日本のアニメCGの転換点」が行われ、『青の6号』、『APPLESEED』、『劇場版 シドニアの騎士』などが上映された。また、上映に先駆けて、『APPLESEED』の荒牧伸志監督、『青の6号』の前田真宏監督によるトークショーが行われた。

 樋口真嗣、山口宏の両氏とともに「ゴンゾ」を設立した前田氏は、CGを活用したOVA『青の6号』で監督デビュー。司会を務めた数土直志氏からCGを活用した経緯について聞かれると「その前にプレイステーション用の『マクロス』のムービー部分を(ゴンゾで)CGIでやった。その際、趣味で(3DCGソフトの)ライトウェーブを使っていた(CGデザイナーの)鈴木朗さんを迎えて、発艦のシーンなどをやった。それが完成した時に『これけっこういいよね…』とみんな錯覚した(笑)。柔らかいものは無理だが、メカ部分をCGIでやって、作画とドッキングしたら長編作れるんじゃない?と勘違いした(笑)。その後、バンダイビジュアルから小澤さとる先生の企画(青の6号)はどうだ?と提案され、では3Dを導入したハイブリッドでやれるかもねというステップだった」と振り返った。

 一方、荒牧監督は『APPLESEED』や『キャプテンハーロック』といったCG作品に舵を切った理由について、「アニメーターの方に(複雑な)メカを描いてもらうのが忍びない、そこに限界があるんじゃないかという思いがあったし、(その前に監督した手描き作品の)『メタルスキンパニック MADOX‐01』がいいスタッフが集まってくれて、複雑なメカを動かすという点ではひとつの到達点だった。その先に行くにはCGでやるしかないと思った」と述懐。「その後、僕が所属していた会社にセガのゲーム『バーチャファイター2』のPV制作の依頼があり、セガの設備を使ってモーションキャプチャーで制作した。その時に、キャラクターでも(CGで)いけるんだなと手応えがあった。僕はメカデザイナーなので、(アニメの)人に芝居をつけるのは得意ではないが、(モーションキャプチャーなら演じるのは)役者さんなので、これなら自分でもできるかなと勘違いした(笑)。その矢先に『APPLESEED』の話があった」とCGを活用するようになったきっかけを語った。

 話はCGアニメーション映画『ファイナルファンタジー』にも及んだ。興行的には苦戦した同作だが、荒牧監督は「あれは世界的に(CGの)レベルを上げた。米国からも(スタッフ)が相当来ていて、皆さんハリウッドに戻ったり、ゲーム業界に戻ったり(して活躍した)。そういう意味ではエポックメーキングだった」とし、前田氏も「日本発のものが後々の(世界の)歴史に大きな影響を与えたケースはそんなに無い。そういう評価をすべき作品」と歴史上の重要作品であることを強調した。

 一方で、CGアニメーションがすっかり浸透した現在では、「方法論が確立してしまうと逆流が起きる」(前田氏)とし、『スパイダーマン:スパイダーバース』をはじめ、「ハリウッドでも、人の肌感、手描き感をどう入れるのかが主流になっている」(荒牧氏)といった潮流についても指摘した。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。