特集上映「没後10年 高倉健特集 銀幕での再会」が丸の内TOEIで7日からスタートした。初日の『駅 STATION』上映時には、高倉健さんの作品を9本担当した木村大作キャメラマンが登壇し、高倉さんとの思い出を語った。
「『駅 STATION』のことなら1週間しゃべれる」と豪語しながら話を始めた木村は、舞台挨拶30分の間に次々と裏話を披露。電車に乗り込んだ高倉さんのアップで終わった結末は、実は倉本聰による脚本では続きがあったことを明かし、「札幌駅に健さんが到着し、駅から出ると、柱の陰から(離婚した役の)いしだあゆみさんがスッと出てきて、復縁を予感させる。その脇を烏丸せつこが通り過ぎて、札幌の街中を歩いていく。そういうシーンを撮った」と説明し、ラッシュを観た段階で高倉さんが「そこ(電車の中)で終わりたい。どうなんですか降さん(降籏康男監督)」と提案したことで、電車の中がラストカットになったというエピソードを語った。
高倉さんについては「一言で言うと、昔なら『オーラのある人』と言えば済んだ。けど今は『オーラがある人』というのが多すぎる。だから(今表現するなら)『凄い人』というのが一番合ってるんじゃないかな。『凄い俳優』はなかなかいないし、これからも出てこないと思う」と表現した。
印象的な雪のシーンの多い同作だが、実は1か月半の撮影期間中、良い調子で雪が降った機会はたったの3回だったという。少ない機会をモノにできるよう、雪が降った際は該当するシーンをまとめて撮るよう意識していた木村だが、「(雪が降っているのに)あるプロデューサーが『大作、今日は早く終えてくれよ。健さんちょっと風邪気味なんだよ』と言ってきたので、健さんにも聞こえるように『冗談じゃないよ!こんな条件、またいつあるかわからねえだろ!風邪ぐらいどうってことねえじゃねえか!』と言って無理やり撮った」と回想。「そのあと10日ぐらい経って、健さんが『木村さん、あれから雪降りませんね。あの時撮って良かったですね』と言ってくれてホッとした。そういうスタッフの気持ちもものすごくわかってくれる俳優さん」と改めて高倉さんの魅力を語った。
イベント終了後の囲み取材でも勢いは止まらず、カメラ越しに見た高倉さんについて「演技するのがうまい人はいっぱいいるけど、健さんは感情でやってるね。無言でも全てを表現している場合が多い」とし、『八甲田山』の撮影では、1ページ丸ごと台詞をカットしたこともあったという。さらに、「健さんは相手役に対して『あの人うまいね』と言ったことがない。『あの俳優には感じるね』という表現をしていた。台詞がなくてもわかるだろうということだね。事実、わかる」と熱弁した。
同特集上映では高倉さん出演作を19作品上映。期間中(~11月22日)は会場で作品のポスターやスチールなど懐かしい品々を数多く展示する。