東宝配給『ゴジラ-1.0』のアカデミー賞視覚効果賞受賞を記念した記者会見が12日に羽田空港第3ターミナルで行われ、授賞式から帰国したばかりの山崎貴監督、渋谷紀世子(VFXディレクター)、髙橋正紀(3DCGディレクター)、野島達司(エフェクトアーティスト/コンポジター)の4氏(いずれも白組所属)が出席した。
下馬評の高かった同作だが、期待に応え受賞を果たした山崎監督は「最高の結果が出てホッとしている」と胸を撫でおろし、オスカー像については「想像を遥かに超える重さ」と笑顔で語った。監督はアカデミー賞の視覚効果賞について「オスカーの中でも聖域中の聖域。ものすごく巨大な予算をかけて、凝りに凝ったVFX(の作品)がいっぱいある中でのベストという場所。(これまで)僕らには挑戦権がなく、夢見ることさえ許されていなかった」と説明し、「そこの門を(アカデミー賞が)開いてくれたのはすごく嬉しいし、ハリウッドの懐の深さを感じた」とコメント。また、「完全にゴジラのおかげ。ゴジラが大スターだと改めて思い知らされた。ゴジラに連れて行ってもらったし、ゴジラがワールドワイドなものになっていっているのは想像以上だった」と、ゴジラだからこそ受賞できたとの思いも語った。
並み居るハリウッド大作に比べ、低予算・少人数のチームで制作したことが話題となっている同作。受賞の決め手について、髙橋氏は事前のプレゼン会(ベイクオフ)について、「他のノミネート作品も見たが、僕たちの行けない(レベルの)技術を使っている。やはり世界は凄いなと思って見ていた。ただ、なぜか僕らの作ったベイクオフ用のビデオが1番面白いなと思った。歓声もすごかった」と振り返り、渋谷氏も「(ハリウッドの)皆さんがVFXを始めた頃に、知恵を絞って何とか作っていこうともがいていた頃を思い出した、と言われたことがあり、そういったところに響いたのかなと思う」と分析。さらに、野島氏は「映画が面白かったのが1番影響あるのかなと思う。ゴジラ、山崎さんの話(脚本)も…全部のピースがはまってこうなったのでは」と考えを述べた。
記者席からは、昨年12月に死去した阿部秀司プロデューサーに関する質問も挙がり、山崎監督は「(自分を)監督にしてくれた恩人。羅針盤のように方向を示してくれた。『ALWAYS 三丁目の夕日』も僕は全然やりたくなかったが(笑)、『監督としての幅を広げるためにはこういうことをやらなきゃダメなんだ』と言ってくれ、(そのおかげで)結果的に色々な作品をできる監督になれた」と感謝の言葉を述べ、「(授賞式の場に)いてほしかった」と故人を偲んだ。
また、山崎監督は同作が北米で大ヒットしたことにも触れ、「今後の日本映画の作り方が変わっていく可能性を秘めている。字幕上映、日本人キャストでも北米で見られるようになってきたことを確実に感じた。野茂選手のあと、たくさんの選手が大リーグに渡ったように、今回をきっかけにワールドワイドな興行を目指した作品を作っていくのは1つの手だと思う」と手応えを掴んだ様子だった。イベントの最後には、出演の浜辺美波がサプライズで花束を持って駆けつけ、受賞の喜びを分かち合った。