松竹配給『こんにちは、母さん』の完成報告記者会見が15日、目黒のホテル雅叙園東京で行われ、山田洋次監督、出演の吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、そしてこの日出演が明らかになった寺尾聰、宮藤官九郎、YOU、枝元萌が出席した。
91歳の山田監督は今作が90本目。永井愛の同名戯曲を原作に、令和に生きる等身大の親子を心情豊かに描く。山田監督は「永井さんの『こんにちは、母さん』を見たのは20年以上前。とても好きで何とか映画にならないかと永井さんとも相談したが、うまくまとまらなかった。一番の原因は(おばあちゃんの)主役を誰にするかというキャスティングの問題。結局そのままになっていたが、一昨年気づいたのは、僕は小百合さんをお母さん役で3本(『母べえ』『おとうと』『母と暮せば』)作ったけども、年齢からいえば(現在78歳で)おばあちゃん役でもおかしくないかなと。(一方で)僕らの世代にとって小百合さんはミューズ。その僕が小百合さんをおばあちゃんにしていいものかと悩んだあげくの果てに、小百合さんに『やって頂けますか』と相談したところ、こともなげに『もちろんですよ』とおっしゃって、ホッとして、この企画が始まった」と経緯を語った。また、作品の仕上がりについては「こんな映画を作りたいと思っても、『こんな』とはかなり抽象的。出来上がってみると全然違う色合いの、思ったより軽やかな音楽が流れてくるような(作品の)感想。出来上がるまでわからないものだなと。毎回そうだが、今度もそういう驚きの目で自分の映画を観ている」と、90本もの映画を作ってきた山田監督でも、自身の作品の完成形に意外さを感じたことを明かした。
おばあちゃん役のオファーを受けた吉永は「『もちろん』とは言ったが、あとで『ちょっと早まったかな?』と思ったりして(笑)。でも私の年代は皆さんおばあちゃんになり、たまたま私が子供がいなかったので、このような形になった。自分に言い聞かせてやるようにした」と胸の内を明かしつつ、「(孫役の)舞ちゃん(永野芽郁の役名)が本当に素敵。一緒にやってとても素敵なひとときを過ごすことができて、おばあちゃんになって良かった」と撮影を笑顔で振り返った。
山田組初参加となった大泉は「(完成した作品は)そんなに大きな出来事が起きるわけではないのに、すごくドラマチックで、切ないところもあり、でも面白い。監督は現場で『ヨーイ』のあとに『悲しくて悲しくて仕方ないんだ。スタート!』といった、直前に言う演出ですごくお芝居が変わるし、ポンというアイデアでどんどん面白くなる。山田監督の映画が面白いのは、監督の細かい演出で面白くなっていたんだと改めてわかった」と、巨匠の手腕にひたすら感心した様子を見せた。公開は9月1日(金)。