【FREE】ハーク『母の聖戦』都内高校で監督参加の特別授業
2022年12月08日
ハーク配給のベルギー=ルーマニア=メキシコ合作映画『母の聖戦』(1月20日公開)では6日、杉並区の都立西高等学校で特別授業ディスカッションを実施。同作は、知られざるメキシコの誘拐ビジネスの闇に迫り、我が子の奪還を誓った母親の想像を絶する愛と執念の物語。オンラインで監督のテオドラ・アナ・ミハイが参加した。
この授業は、12月4~10日の人権週間にちなみ、同作を観て“人間の尊厳”とはどういうことなのかを話し合う場として実現。およそ20人の生徒と、20人の保護者が来場。ひとりの男子生徒が「普段自分が暮らしている日本とメキシコには大きな違いがあり、ショッキングだった」と率直な感想を述べ、「どうしてメキシコの環境を題材に描いたか」と尋ねると、監督は10代の頃にアメリカに留学してメキシコ人の友人を得たことや、実際にメキシコに行き治安の悪さを目の当たりにした自身の経験に端を発していることを説明。また、映画制作に向けてリサーチするなかで娘を誘拐された女性に出会った経験にも触れ、「その女性は取材で『毎朝、目覚めたときに人を殺すか、自殺をするか考えてしまう』と印象的な言葉を残した。ごく普通のお母さんがいったいどうしてそう考えてしまうまでに至ったのかと衝撃を受け、母親の視点で描こうと決めた」と語った。続けて、モデルとなった女性を危険にさらさないために当初ドキュメンタリーの手法をとろうとしていたところ、途中で劇映画に変更したことや、残念ながら彼女が自宅前でカルテルの銃撃によって死亡したことも話すと、生徒たちはあまりに厳しい現実に言葉を失った。生徒たちからは「そういう状況なのは、国の経済力の弱さがあるのかな」「その現状を変えるためには革命しかないのか」「高校生がアクションを起こすために必要なものはあるか」と次々と質問を投げかけ、彼らの真摯な反応に監督も興味を寄せながら、丁寧に答えていった。なかで監督は、「この映画のように石を投げ続けること、議論を続けることが大事じゃないかと思っている。それによって、政治家たちの優先事項が変わって、こうした問題に真剣に取り組むようになっていくのではないかと期待している」とコメントした。
監督の退出後は、慶応義塾大学非常勤講師の山本昭代氏によるメキシコの現状を説明する講義も実施し、生徒たちも熱心に耳を傾けた。
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。