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ミニシアター・エイド基金、57時間で1億突破

【FREE】ミニシアター・エイド基金、57時間で1億突破

2020年04月17日
 濱口竜介監督、深田晃司監督、モーションギャラリー大高健志代表が中心となり立ち上げた、新型コロナウイルスの影響で困窮する全国のミニシアターを応援するクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」に、開始57時間で目標額1億円のサポートが集まった。24時間で5500万円突破という国内最速記録を達成し、メディアやSNSで多くの話題を集めていたが、15日21時45分に目標金額の1億円を、国内最速で達成した。1億円達成は、文化芸術活動のクラウドファンディングで日本初(モーションギャラリー調べ)。また、モーションギャラリー史上初の1億円プロジェクト達成となった。今後も参加団体数の増加を予想し、また、より多くの寄付をすることを目指し、ストレッチゴールを設ける方針だ(金額検討中)。

 目標額達成に際して、発起人の濱口監督、深田監督、大高氏、賛同人の女優の渡辺真起子、片渕須直監督は感謝コメントを発表した。

 そのなかで濱口監督は、あまりに早いタイミングで達成した一番の理由に、「このファンディングは支援という以上に、(ミニシアターで映画の魅力を知った)体験への恩返しなのではないだろうか。少なくとも私にとってはそうです」と分析。現在は1団体当たり平均140万円程度分配できることを明かし、収束への道が不透明な新型コロナ禍に際して、「長く続くのは明らか。本当に皆が安心して外に出られるまで、ミニシアターを保持するには決して十分ではありません。ファンディングは残り29日。現在、新たな目標設定を検討しています。 先は長いです。急ぎすぎず、一人ひとり無理のない範囲で、ちょっとずつ積み上げましょう」と呼び掛けている。

 深田監督は、「驚くべきスピードで達成された1億円という額を見て、もともと私たちが考えていた『目標金額』がいかに浅はかなものであったかを実感しました。本音を言えば、1億円という数字は『未達成』を恐れ、理想よりも確実さを優先し、支援とのバランスを計りつつも慎重に設定されたものでした。それでさえも、達成には十分に一ヶ月を必要とすると覚悟していたのですが、映画ファンの想いの強さは私たちの想定をはるかに超えていました」と驚きを隠さない。そのうえで、「ただ、このクラウドファンディングを単なる美談にしてはならない」と警鐘を鳴らす。「本来は、平時においてもこの願いをきちんと掬い取り、劇場を恒常的に支援する公的な枠組みがあるべきなのです。それは、国だけの責任ではなく、映画業界の内部においてさえも制度設計が疎かにされてきたことの反省をコロナ禍後に私たちは行い、改善していかないといけません」とした。

 猛スピードによる1億円達成についての大高氏の分析では、「SAVE THE CINEMAの署名活動と連携して進めてきた事で、多くの方に『クラウドファンディングで短期的なパッチを充て時間を稼ぎつつ、署名活動で政策を動かすことで長期的なミニシアター存続のインフラを整備する』というロードマップを示せた事や、映画館で作品を上映する作り手である、濱口・深田両監督が先頭に立ち、ミニシアターの持つ社会的意義を改めて広く訴えた事で、多くの人に強い共感や自分ごととしてこの問題を捉える機運がひろがった事 ・何より、一日一日丁寧に映画の魅力を来場者に伝え、映画の歴史を紡いでいたミニシアターを運営する方々の努力により、ミニシアターに対して強い愛着と思い出を持っている方々が全国に沢山いらっしゃった事。ということではないでしょうか」とモーションギャラリーを運営する立場から、複数の要因をあげた。今後の同基金の取り組みについては、「本当に多くの映画人と映画ファンの力が集合し、大きな一歩を踏み出した気がしています。でもまだまだ支援が足りないのではという声が達成の祝福メッセージと共にツイッターで広がっています。この声を、全国の映画館に届けたい。必要と過分配の線を超えない様に気をつけつつ、ミニシアターが再起動するまでの時間を1日も長く耐えていただける様に、引き続き1円でも多くのお金を映画館にとどけるべく、頑張っていきます」と意気込みを語った。

 渡辺は、「一映画ファンとして胸がいっぱいになっています。世界が平静をとりもどし、未来と希望という言葉がいっしょにありますように、その時には、本来の私の持ち場で精一杯役目を果たせるよう頑張ります」、片渕監督は「今回の災厄がいつまで続くのかわからない今、全国のミニシアターのみなさんの安心がさらに得られることを願 いたい。そして、こんなことが過ぎ去ったとき、存分に映画を観に来ていただけるようでありたい」とそれぞれに願いを込めた。

 ミニシアター・エイド基金は、残り29日。16日16時現在、すでに1億2千万円が集まる加速度だ。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。