【FREE】PFF開幕、黒沢清がアルドリッチ魅力語る
2018年09月11日
1997年スタートし、今年第40回を迎えた「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」が8日に国立映画アーカイブで開幕した。
初日からメインプログラムの自主映画コンペ「PFFアワード」のほか、ロバート・アルドリッチ監督の生誕100周年企画、カメラマンで映画監督のたむらまさき追悼企画が行われ、なかにはチケットが完売した回もあり、盛況だった。開催前から話題を集めていたアルドリッチ監督特集の『キッスで殺せ!』上映後には黒沢清が登壇、魅力を語った。
黒沢は、「私が高校から大学に進学する1970年代半ば、『ロンゲスト・ヤード』と『北国の帝王』を観て、瞬く間に魅了された。その後、『ハッスル』や『合衆国最後の日』なども観たが、この2作品は当時の僕にとって格別だった。その魅力はめっぽう面白いに尽きる。男と男のガチンコ勝負というか、バカみたいなことを本気でやる男たちの姿がこれほど感動的になることに驚いた」と出会いを語った。
黒沢の説明によると、1970年代には “男同士の闘い” というフレーズはすでに古臭くなっており、サム・ペキンパーはウェットでノスタルジックに、リチャード・フライシャーは聡明に、ドン・シーゲルは冷徹に扱っていたという。しかし、アルドリッチは違った。「アルドリッチは、誰もが古色蒼然に違いないと思っていた本気の男同士の闘いを目の覚めるような形で描いていて僕はびっくりした。しかも、男たちの闘いはくだらなく、勝っても負けてもどうでもいい。無目的で無意味なところが、1970年代だった。ばかげたことを目の覚めるような痛快さでアルドリッチは描いていた。これはある意味、画期的でほんとうに面白かった。当時の僕は娯楽映画はここにあると思った」と当時を振り返った。
その後、『キッスで殺せ!』については「とんでもない映画を観てしまったというのが率直な感想ではないでしょうか」とし、「物語の全貌が掴めるようで掴めない。マイク・ハマーという探偵が一貫して謎を追っている。それは分かるが、それ以外のことが分からない。彼がなぜ謎を追うのかも分からない。でも、こちらの目をくぎ付けにする、普通じゃない瞬間がいくつもある」と魅力を語った。
当初予定していた時間を超えるほどの熱の入った解説に会場は聞き入った。『キッスで殺せ!』は19日にも上映。同映画祭は22日まで。
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。