【FREE】大映男優祭が14日スタート、佐藤氏トークも
2018年04月17日
1942年の大映創立から75周年にあたる昨年、作品群を振り返る特集企画「おとなの大映祭」「大映女優祭」が行われたが、14日、シリーズの最後を飾る「大映男優祭」が角川シネマ新宿でスタートした。
最終章では、長谷川一夫主演で大映初カラー映画『地獄門』、市川雷蔵主演『薄桜記』、勝新太郎主演『座頭市物語』など、大映の看板俳優の名画の数々を紹介する。
15日の三隅研次監督×市川雷蔵主演『斬る』上映後には、当時の大映をよく知る映画評論の第一人者・佐藤忠男氏が登壇し、大映の歴史を辿っていくようにトークを展開した。その一部を抜粋する。
まず、佐藤氏は発起人のひとり、永田雅一専務(設立当時)について触れた。「永田さんはスカウトの名手と称され、次々と有能な人材を引き抜いてきた。そんな永田さんが “世界の永田” として注目を集めだしたのは、黒澤明監督『羅生門』(1950年)からだった。日本映画として初めてヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞し、黒澤監督や日本映画が世界で認知・評価されるキッカケとなった。そして、衣笠貞之助監督『地獄門』(1953年)ではプロデューサーとして撮影に細やかな指示を出していた。国内では賛否ある作品だが、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。永田さんは海外で何が評価されるかを見抜いていて、素晴らしいと思った」と日本映画史にもたらした功績を紹介した。
続けて佐藤氏は、「(永田さんは)その後、世界を見据えた作品づくりとして、社外から溝口健二監督、市川崑監督、川島雄三監督らベテランで才能豊かな監督を引き抜き、自由な環境で映画を作らせていた」とし、「ただそれだけではなく、B級作品も作らせていた。当初、娯楽性の強いB級作品は評価が低かったが、実は掘り出し物がたくさんある。それは大映のスタッフの熱意によるもので、B級作品を極める職人芸があるからこそ」と、多様な作品を制作していたことを明かした。
この日、上映された『斬る』については、「この作品は、企画としてはB級だが、美術作品ともいえるチャンバラを作りだしている。企画はB級といっても、スターは一流。スタッフはスターたちの特徴をよく理解し、スターがより輝ける作品を生み出すことに必死になっていた。だからこそ、B級で終わるはずだったものの中から、傑作が生まれた」と熱弁をふるった。
最後に、佐藤氏は「大映には、ベテランの監督、そしてB級映画を突き詰めていくチーム、この2つが共存していた。会社のカラーに縛られず、時代にあわせて自由な発想で作品づくりをした大映には見ごたえのある作品が沢山ある」と締め括った。
「大映男優祭」は5月11日まで。配給はKADOKAWA。
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。