ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメントは、『ミュージアム』のメイキング映像のマスコミ向け試写会を10日、東京・虎ノ門の同社試写室で開催。終了後、大友啓史監督と、装飾の渡辺大智氏がトークイベントを行った。
小栗旬と妻夫木聡が出演したノンストップ・スリラーエンターテイメント。同作では、妻夫木演じる猟奇殺人犯が創り出す異常な世界観を再現したセット・小道具も大きな注目ポイントであり、イベントでは、監督と、大友組に参加し続ける渡辺氏が同作に込めたこだわりを語った。
まず、普段あまり表に出ない「装飾」という仕事について、渡辺氏は、美術担当が描いたイラストを「具現化すること」が仕事だと説明。大友監督は「装飾という仕事は、ディテールを作り上げていくこと。俳優がセットに入り、『ここで自分は暮らしているんだ』というイメージを触発しないといけない。俳優部の役作りのためにも大事」とし、渡辺氏を「大智君の仕事にはソウル(魂)を感じる。そうすると、演出以外からもソウルが(観客に)伝わる」と称賛した。
原作や台本にも描かれていない部分を表現しなければならない装飾。例えば、被害者の一人で、引き篭もりのオタクの部屋を再現する際、渡辺氏は「秋葉原で男の子に声をかけて、牛丼をおごってあげて色々聞いた」と創作にいたる一片を語った。また、犯人が潜む“ミュージアム”を再現するためには、「普通にやっても美術館の真似になるだけ。いかに病的に見せるか。最終的に、東京駅前の『キッテ』(にあるミュージアム)に、東大が集めた美術品が展示してあって、その物量に負けないように準備した」という。さらに、カーチェイスのシーンでは「派手に見せるためにガラスを撒いた。でも、本物を撒けば小栗くんが血だらけになってしまうので、痛くないものを撒いたり…」と、少し見ただけではわからない工夫の数々を明かした。大友監督は「妻夫木くんがセットに入り、いくつかある包丁の中から中華包丁を選んだ。(中華包丁を選んでほしかったので)『それそれ!』と思った。そういう、現場にチョイスを作ってくれるのもありがたい」と、俳優が演技をする際にイメージを膨らませる役割も果たしていることも強調した。
クライマックスの舞台である犯人の地下室は、川崎にある廃館となった体育館を使用。そこでは「10日間は(籠もって)入っていた。頭がおかしくなりそうだった(笑)」と渡辺氏。それだけ入念に準備しながら、実際に映像で映る部分はごく一部だとし、「100回準備しても、1回使われたらいい方。でも(カットされても)悔しい気持ちは全然ない」と裏方に徹する心構えを語った。ブルーレイ&DVDは3月16日(木)発売。