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TIFF、『キンゴジ』上映で特技の中野氏

【FREE】TIFF、『キンゴジ』上映で特技の中野氏

2016年11月03日
左から笠井、中野監督、町山の3氏 左から笠井、中野監督、町山の3氏

 第29回東京国際映画祭日本映画クラシックスでは1日、ゴジラシリーズ初の全編4Kデジタルリマスター版として、『キングコング対ゴジラ』(配給:東宝、監督:本多猪四郎)を1962年公開当時より54年ぶりに復活させた。短縮版作成時に24分がカットされ、長らく失われていたフィルムが今回発見されたことにより実現、日本映画専門チャンネルが最新デジタル技術を駆使して4KDR化した。

 当日、会場のEXシアター六本木(920席)はほぼ満席で、上映直後には割れんばかりの拍手が起こった。トークショーも行われ、特技監督の中野昭慶、映画評論家の町山智浩の2氏が登壇した。

 中野監督は、「本来、私たち作り手はゼロ号試写でしか綺麗な映像を見ることができない。フィルムは私たちの手を離れた瞬間から劣化の一途をたどる。だが今回、ゼロ号に匹敵する素晴らしい映像を見ることができた」とDR映像への感激を言葉にした。公開年と同じ62年生まれの町山氏は、「劇場で初めて観たのは短縮版。東宝チャンピオンまつりでの上映だった。54年の歳月を経て修復されたが僕も54歳になった。とても感慨深い」と縁の深さを語るとともに、「最初に劇場で観た怪獣映画。コメディという点、大企業が(ゴジラの)宣伝のために、日本で戦争させるというアイデアはすごい」と魅力を語った。

 シリーズ6作品を手掛けた生き字引である中野監督は、トーク終了時刻を延長するほど当時のエピソードを惜しみなく披露した。内容は、「ゴジラのスーツアクターの中島春雄さんが、この時はキングコング役になりそうだったが、動きがどうもゴジラでね(笑)」「円谷英二さんにとっての勝負所はキングコングでもゴジラでもなく、本物のタコを登場させること。いけすの側にセットを作って撮影した」「特撮組とドラマ組は同じ方向に向かって仕事した」「原住民のシーンは特撮で増やしていて、二重露光を5回ほど重ねて合成している」「キングコングには、サボテンの毛を使った」と語り尽くせない様子で、町山氏、司会の笠井信輔の質問も止まらなかった。

 トーク終盤、笠井が『シン・ゴジラ』の感想を中野監督に訊ねると、「デジタル時代のゴジラだった。スーツの中に人が入ることも、セットを作ることもなくなっていくだろう。『あぁ、アナログ時代のゴジラは終わったのだ』と思ったし、これからはどんな国の人が、どんなゴジラを作っていくのか気になるところ」と感慨深げに話し、「粘ること、こだわることが、作り手にとっての極意」と若い世代にエールを贈った。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。