コピアポア・フィルム配給のイエジー・スコリモフスキ監督最新作『イレブン・ミニッツ』(提供:ポニーキャニオン、マーメイドフィルム)公開記念イベントが5日、ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された。
イベントは、第31回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した『ザ・シャウト さまよえる幻響』の上映からスタート。ポーランド出身スコリモフスキ監督が、イギリス映画として制作し、78年に公開された作品。叫び声で人を殺すことができる男を中心に展開されるサスペンススリラーだ。
上映後にはトークイベントが行われ、来日中のスコリモフスキ監督と映画評論家の中原昌也の2氏が登壇。トーク序盤は、『ザ・シャウト』の話題が展開された。中原氏が、当時の観客の反応について訊ねると、スコリモフスキ監督は、「これは初のドルビー音響映画だ。カンヌには、ドルビーステレオの音響機器を運び込んだのを覚えている。私たちがグランプリを獲れた理由については、色々言われた。いじわるな人は、『審査員たちの耳が聞こえない程、大きな音を出したからだ』と。最初の反応は、音に対するものだった」と当時を振り返った。また、男が叫ぶシーンについてスコリモフスキ監督は、「叫びは23秒間続く。これは撮影前から決まっていたから、23秒間叫べる人間を起用しなければいけなかった。カットを割ると、音の波形が合わなくなるからね。サーカスの人間にスタジオで叫ばせると、16秒間しか叫べなかった。最終的には、僕がやることになったんだ」とエピソードを披露し、映画を観たばかりの観客を驚かせた。
終盤の話題は5年振りの最新作『イレブン・ミニッツ』について。タイトル通り、11分間の出来事を81分で描き、複数の見ず知らずの人物に起きるドラマをモザイク状に構成したリアルタイムサスペンス。この企画について、中原氏が切りこむと、スコリモフスキ監督は、「ある日、ゾッとするような恐ろしい夢を見た。これは絶対映画になると思い、すぐさまパソコンに打ち込んだ。その時点で最後の5分間のシナリオは完成したのも同然だった。その後は、前の75分程をどのように構成するかを考えた」と経緯を説明。映画の内容は詳しく明かされなかったが、「結末は悲劇的でもあり、哲学的でもある。登場人物は悲劇を悲劇と思わなくなっていく。つまり、より広い視野で物事を見るようになるんだ」とテーマ部分を話し、観客の期待感を膨らませた。最新作『イレブン・ミニッツ』は、8月20日よりヒューマントラストシネマ有楽町、同渋谷ほか全国順次公開。