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ファインF『サウル~』、ネメシュ監督会見

【FREE】ファインF『サウル~』、ネメシュ監督会見

2015年11月18日
『サウルの息子』ネメシュ・ラースロー監督 『サウルの息子』ネメシュ・ラースロー監督

 今年のカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した『サウルの息子』(ファインフィルムズ配給)のネメシュ・ラースロー監督が来日し、17日に都内のハンガリー大使館で行われた記者会見に出席した。

 同作は、アウシュヴィッツ解放70周年を記念し製作されたハンガリー映画。アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所で、死体処理を担当(ゾンダーコマンド)する男を通し、ホロコーストの地獄と、極限状態における人間の尊厳を描く。長編デビュー作にしてカンヌで受賞したネメシュ監督は、自身の家族も収容所で犠牲になっており、作品に懸けた思いについて「文明社会は、自分自身を破壊してしまう性質を持っている。その悲劇をどれだけリアルに描けるかがメインテーマの1つだった。今までのアウシュヴィッツを題材にした映画は、そこを伝えきれていなかったと思う。一人の人間が、極限状態で何を思い、どう生きたかを、観た人が理解できるような映像を心掛けた」と話した。また、あまり知られていないゾンダーコマンドを取り上げた理由は「(映画の世界観を)体感するために、案内役になってくれたのがゾンダーコマンド。彼らは、地獄において、存在することを許された人たち。生命体として、食事も与えられていた。彼らの痛みは体感的なものではなく、精神的に徐々に殺されていく。彼らがどう苦しみ、生きたかを通して伝えたかった」と説明。

 製作費は150万ユーロ(約1億9千万円)で、ハリウッド大作と比較すれば低予算だが、「どこまで作り込んだとしても当時を完璧に再現することはできない。セットを細かく作り込むのではなく、雰囲気をどれだけリアルに描くかを意識した」という。また、38歳の若きネメシュ監督が映画を通して戦争の歴史を継承していくことについては「どの民族にも負の遺産があり、それを忘れてはいけない。我々は自滅しないためにも、教訓にしていかなければならない」と強い意志を示した。

 主演はルーリグ・ゲーザ。2016年1月23日(土)よりシネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。