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『恋人たち』橋口監督、淀川氏の思い出語る

【FREE】『恋人たち』橋口監督、淀川氏の思い出語る

2015年10月30日
『恋人たち』左から安藤氏、橋口監督 『恋人たち』左から安藤氏、橋口監督

 第28回東京国際映画祭ジャパン・ナウ部門では橋口亮輔監督の最新作にして劇場未公開作品『恋人たち』(配給:松竹ブロードキャスティング+アーク・フィルムズ)が28日夜に上映された。上映後にはトークイベントが実施され、橋口監督と安藤絋平プログラミング・アドバイザーが登壇した。

 『ぐるりのこと。』以来7年ぶりの長編映画。明日に未来を感じることすら困難な今を生きる全ての人に贈られる、絶望と再生の物語。通り魔殺人事件によって妻を失い、橋梁点検の仕事をしながら裁判の為に奔走する男。姑とそりが合わず、夫からは関心を持たれず、突如現れた男に心が揺れ動く主婦。親友への想いを胸に秘める同性愛者で、完璧主義のエリート弁護士。不器用だがひたむきに日々を生きる3人を軸にして描かれている。

 安藤氏が「『二十才の微熱』を観た淀川長治さんから『溝口健二やルキーノ・ヴィスコンティの様に、人間のはらわたを掴んで描く監督だ』と評価されたらしいですね。まさに『恋人たち』は淀川さんに観て頂きたい映画だったと感じました。きっと淀川さんは橋口監督の作品の中で描かれているキャラクターのことを指しているのでしょう」と切り出すと、橋口監督は「25年前、僕は30歳だった。その時に初めて淀川さんにお会いした。『二十才の微熱』について、『傑作だ』と言って頂いた。しかし、『後半が駄目。あんたには根性がない』と厳しいご意見も頂きました。他にも細かく駄目だしを頂いた後、『あんたは人間のはらわたを描ける人。映画を選んだのだから最後まで映画をやりなさい。あんたはやれる』と仰られた。その言葉は今でも大切な財産」と淀川氏との思い出話を語った。

 作品について安藤氏が「役者さんたちは無名の人からプロの人まで様々。無名の人にも不思議なリアリティを感じた」と感想を述べると、橋口監督は「出演者の8割はワークショップメンバー。中にはずぶの素人もいる。ベテランの人から彼らまでを同じ世界で生きている様に見せることに精力を注いだ」と返答し、「ワークショップメンバーに出演してもらうことが企画の発端だった。自分のモチーフを100%出すといった、今までと同じような映画作りは、彼らにとっても荷が重いだろうと感じた。彼らの個性を活かすこと、自分のモチーフも出すこと、今の日本の空気も盛り込むこと、この3本の柱を考えながら制作した。主婦役を演じられた成嶋瞳子さんは、プロではないのですが、撮っていて一番楽しかった」と続けた。11月14日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開される。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。