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『岸辺の旅』、シロウズ・松田広子Pに聞く

『岸辺の旅』、シロウズ・松田広子Pに聞く

2015年09月04日
 黒沢清監督最新作『岸辺の旅』が、10月1日(木)よりテアトル新宿ほか全国公開される。今年のカンヌ国際映画祭では、ある視点部門の「監督賞」を受賞し大きな話題となった。

 主演は深津絵里、浅野忠信の実力派コンビ。湯本香樹実の同名小説を原作に、死んだ夫と、3年間夫を待ち続けた妻が、「さようなら」を伝えるために共に旅をする異色のロードムービーだ。フランスとの共同製作作品という点も注目な同作について、制作プロダクションのオフィス・シロウズ、松田広子プロデューサーに企画の経緯などを聞いた――。


 原作本が文藝春秋から出版されたのは2010年のこと。松田氏は「刊行直後にこの本を読みました」と振り返る。松田氏がプロデュースし、10年に公開した『アブラクサスの祭』の原作者である玄侑宗久氏から「岸辺の旅」を紹介され、同作の試写に湯本氏が来場し面識を得たこともあり、興味を持ったという。内容は、死者と生者が平然と同じ世界で生活をしている特殊な設定だったが「こういうことが本当にあるんじゃないかという、真実味のある作品に感じました。(主人公)2人の関係や、その周りの人の在り様がユニークで、静謐ながら力強い作品」という感想を持ち、「一目ぼれした」という。

 映画化に向け、監督には真っ先に黒沢清を指名した。「この本を読んでいる時から、ぜひ黒沢さんで映画を観てみたいと思いました。死者と生者の境界が曖昧な世界観は、これまでも黒沢さんは手がけられていますし、夫婦の話というのも向いているのではないかと。黒沢さんはボーイミーツガールの作品はあまりありませんが、すでに関係が出来上がっていながら、危うい関係であるカップルは『大いなる幻影』(99年)で描いています。この小説も、映像的に面白いものにしてくれるはず」との考えがあった。加えて、新たなジャンルへの挑戦をいとわない監督の性格から「これまで手がけていないロードムービーなら面白がってくれるのではないか」という期待もあったという。

 実際に小説を読んだ黒沢監督からは、……

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