アルゴ・ピクチャーズ配給『ベトナムの風に吹かれて』のベトナム初披露となる試写会が18日、ハノイのナショナルシネマセンターで行われた。上映後の記者会見には、大森一樹監督や主演の松坂慶子らが出席した。
同作は、日本とベトナムで初の合作映画。製作から撮影、出演者、スタッフ編成まで両国の映画人が手を取り合って完成させた。物語は、ハノイ在住の日本語教師・小松みゆき氏が認知症の母とのベトナム暮らしを綴った「越後のBaちゃんベトナムへ行く」が原案。60歳を過ぎて第二の人生を歩もうとする団塊の世代に向けた、大人の青春映画。松坂慶子が主人公を、草村礼子が認知症の母を演じる。
劇中でベトナム語を話す松坂は、「撮影で苦労したのはやはりベトナム語。撮影前に3回ほどベトナムに来て、小松さん、そして皆さん(ベトナム語教師、共演者)に教わった。岡田(裕)プロデューサーや大森監督から言われていたとおり、リラックスして伸びやかにできた」と振り返った。
ベトナムのメディアから音楽について問われ、大森監督は「日本の古い民謡から戦時中の歌、70年代フォーク、最新ロックまで、日本の音楽史をなぞる形で音楽を入れた。映画のテーマの一つが戦後70年なので、音楽も70年をさかのぼっていった」と、選曲の意図を説明。認知症、介護について原作の小松氏は「認知症は、そんなに深刻に考えても仕方がないと思う。異文化だと思ってみる。面白がる。来たボールを投げ返す。そういう感覚になったら楽になる」と自身の経験から生まれる言葉で返した。
ベトナム側のプロデューサー・監督であるタット・ビン氏は「脚本を読んで、地味だけど、とても大切な話だと思った。両国で共通するテーマ。ベトナムでは米映画やアクションが好まれるが、庶民の生活を題材にして、見た人が語り合う映画をこれからも作っていきたい」と、合作の感想を述べた。一方、日本側プロデューサーの1人である上田義朗氏は「今まで両国の関係は経済中心。最近は安全保障の分野でも戦略的パートナーとしての関係ができつつある。これからは芸術・文化の分野だ。本作が両国の心に響く、交流になる映画になれば」と、両国関係の未来に思いをはせた。
この日は交流会もあり、スタッフ、キャストが再会を喜んだ。フォーセインツwith松坂慶子としての主題歌「たまには仲間で」が披露され、原作の小松氏らコーラス隊も加わり、会場を大きく沸かせた。
なお、両国で公開が決定済み。ベトナムでは10月11日より同会場のほか、オーガストシネマなど全国で公開予定。日本では9月26日より新潟7館で先行、10月17日より有楽町スバル座ほか70館で順次公開を予定している。