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『野火』試写&記者会見に塚本晋也監督登壇

【FREE】『野火』試写&記者会見に塚本晋也監督登壇

2015年07月16日
『野火』(中央左から塚本監督、森優作) 『野火』(中央左から塚本監督、森優作)

 海獣シアター配給『野火』の試写会及び記者会見が14日夜、有楽町・公益社団法人 日本外国特派員協会で行われた。監督、主演の塚本晋也(兼編集、撮影、製作)、共演の森優作が登壇し集まった報道陣らの質問に答えた。

 『野火』は、戦争文学の代表作として知られる大岡昇平の同名小説を原作に映画化したもの。舞台は第2次世界大戦のフィリピン・レイテ島。日本軍の戦況が敗戦濃厚の中、島をさまよう田村一等兵を塚本監督自らが演じる。87分の全体尺で戦地において孤独、恐怖、空腹、病気などから極限状態に押し込められた人間の変化が描かれている。撮影は13年7月にフィリピン・ミンダナオ島でクランクイン。同年12月末のクランクアップまでの間、深谷、沖縄、浦和、ハワイでもロケを敢行している。「資金が少なかった。大スタジオで撮影したわけでもなくロケがメイン。しかし逆にシンプルになり、やりたいエッセンスを凝縮できた。スタッフはボランティアで集まった人がほとんどで、スタッフとキャストの両方できる人をSNSで募集した。とにかく毎日が大変だったが、多くの人の協力を得て完成した映画だ」と塚本監督は現場を振り返っている。

 また、59年には同原作小説を市川崑監督が映画化しているが、塚本監督が事前に寄せたコメントでは、市川崑『野火』のリメイクではなくあくまでも原作から感じたものを映画にしていることが説明されている。試写会前に登場した塚本監督は、「30年程前から製作を意識していたが中々実現しなかった。しかしここ3年の程、日本の情勢は戦争の方に近づきつつある。今撮らないと撮れなくなるという危機感から撮影した」と製作の経緯について触れた。

 塚本監督は上映後に再び登場し、「以前は『戦争は恐ろしいもの』という普遍的なテーマを豊かな原作で描きたいという想いだった。戦争に近づいている実感がなかったからこその想いだったが、撮影時には少し変わった。戦争への現実味が増した。先ほど申し上げたように危機感から製作し、近未来に起こってしまうかもしれないことへの恐怖感や警告に近い想いが強かった」と動機の変化についてコメント。さらに続けて、「戦争映画と言えば白黒が多いイメージ。それは過去に起こったことを映しているからだろう。だが、本作ではまさに現在起こっていることかの様に見せる為にカラー映像にした。演じる面でも『近未来に起こりかねないことを憂い、そうなって欲しくない』という意識を持った。本作を見るたびに、皆さんがつくづく嫌な心持ちになってほしい」と作品に込めた想いを語った。7月25日(土)より渋谷・ユーロスペース、立川シネマシティほか全国順次公開される。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。