◎9月好調、今年の映画興行は年間で2300億円超へ
映画興行についてのコラムを、ネットで始める。その際、私が考えたいのは、ネットにおける記事の中身である。
当社発行の紙媒体で2008年の4月からスタートしたコラム「映画業界最前線」とは、明らかに形を変える必要がある気がしている。さらに、「映画業界最前線」は、映画業界の方々へ向けた記事内容であり、不特定多数の方々が見るネット記事は、より一般的なわかりやすさが求められるということもある。このあたりを念頭に、ネットで記事を書く、読むとは、いったいどういうことなのかも考慮しつつ、執筆を進めていこうと思う。まあ、あまり堅く考えることもあるまいが。
―さて、本題に入るが、今回はまず、今年の映画興行の現状を少しおさらいしてみよう。映画界は、夏作品の興行が一段落し、秋興行戦線真っただ中。9月は、悪くなかった。一つ例を挙げると、北海道の札幌のシネマフロンティアでは、9月興収が1億9500万円を記録。昨年9月実績は1億1500万円だったので、何と昨年比では約170%という素晴らしい成績になった。夏作品の好調が持続されたのと、9月に入り「THE LAST MESSAGE 海猿」「ハナミズキ」「バイオハザードⅣ」などのヒット作品が出たからである。
ちなみに、配給会社13社の1~8月累計では、全興収が1452億6千万円で、これは昨年比108%と好調維持。9月はまだ集計が出ていないが、先の札幌の例を見ると、全体も当然昨年の9月をかなり上回っていることが推測できる。
はっきり言えば、今年の映画興行は好調なのである。ひとつに、3D映画効果が大きい。「アバター」「アリス イン ワンダーランド」「トイ・ストーリー3」などが、興収100億円を超え、さらに公開中の「~海猿」はすでに46億円を突破、前作(71億円を)を上回ることが確実視されている。3D映画、様さまである。
これに伴い、不振が伝えられてきた洋画作品も、ある程度は成績を伸ばしてきた。東宝の配給作品中心に、邦画のヒット作も目立つ。といった全体の底上げが、今年の好調さを生み出していると言っていい。
今年、年間を通した映画興収では、昨年の2060億円を大幅に凌ぎ、2300~2400億円あたりまで伸びるのではとの推測もある。そうなると、昨年を10%以上も上回ることになるのだが、果たしてどうなることやら。
もちろん、いいことだらけというわけにはいかないが、人々の目が映画に向き始めたことは事実だと思う。この流れを、どう生かしていくかが大切である。
(大高宏雄)