いい音楽は理屈ではない…樹里からんのアルバム「TORCH」
2011年02月09日
日本レコード協会では「大人の音楽」キャンペーンを行っている。その概念は「演歌・歌謡曲」でもない、まして「J-POP」でもないのが「大人の音楽」だという。当初は音楽評論家の富澤一誠さんが提唱した。それは「Age Free Music」という新しいタイプの音楽だった。例えば、秋川雅史「千の風になって」、すぎもとまさと「吾亦紅」、秋元順子「愛のままで…」、さらには樋口了一「手紙~親愛なる子供たちへ~」、坂本冬美「また君に恋してる」、そして植村花菜「トイレの神様」といった作品を指す。
「年齢もジャンルも関係ない」「いい歌はいい」という理念を掲げたのが「Age Free Music」だと富澤さんはいう。
各レコード会社は「Age Free Music」の理念に合った作品を出しているが、そういった中、にわかに注目され始めている作品がある。
樹里からんのアルバム「TORCH」だ。このアルバムは、いわゆるJ-POPのスタンダード曲をジャズ・テイストのアレンジにして、全く新しい世界を描き出している。
「接吻」(オリジナル・ラブ)、「恋人よ」(五輪真弓)、「PRIDE」(今井美樹)、「ワインレッドの心」(安全地帯)、「ミスター・サマー・タイム」(サーカス)、「セカンド・ラブ」(中森明菜)、「カムフラージュ」(竹内まりや)、「時代」(中島みゆき)…。
樹里からんは、03年に新星堂が主催した全国規模のオーディション「CHANCE」で準グランプリを獲得したのがキッカケで関西から上京。06年に「TOKYO JAZZ 2006」のプレイ・イベントに出演してパフォーマンスをやって一躍注目された。その後、インディーズで活躍。昨年1月に行われた「ビルボード・ジャパン・ミュージック・アワード2009」では「2010年ビルボード注目のアーティスト」に選ばれている。そして、今回のアルバムがメジャー第1弾となった。
ジャズシンガーとして活躍している樹里からんが、なつかしのヒット曲に新たな息吹を吹き込み蘇らせたのが大きな特徴だ。ムードたっぷりな大人の作品集に仕上がっている。
オリコンでは初登場82位。正直言ってパッとした順位ではなかった。しかし、日本テレビ「ズームイン!朝」やフジテレビ「とくダネ!」で紹介されるやメーカーには問い合わせが殺到。CDショップでも反響が高まり、今週に入ってからはメーカーに2000~3000枚のバックが寄せられていると言う。すでにバックはトータルで1万枚を超えている。この種のアルバムとしては異例な数字である。
富澤さんは「大人のラブソング“熟恋歌”を歌う樹里からんは良質な大人の音楽“Age Free Music”の旗手となった」と評している。
やはり、いい音楽は理屈ではないと言うことかもしれない。
(渡邉裕二)