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被災地・被災者支援と称すチャリティー・コンサートへの疑問

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被災地・被災者支援と称すチャリティー・コンサートへの疑問

2011年05月18日

 東日本大震災以降、音楽業界を含め芸能界は被災地、被災者支援の “チャリティー流行” だ。どう考えても異常過ぎる。そんな中、俄かに言われ始めてきたのが「チャリティー貧乏」。正直言って、こういったムードは、もうそろそろ考え直さなければならない時期に来ているのではないか?

 震災後の宮城県、福島県というのはホールが使用できない。つまり、この両県で一般のコンサートを行うのは現時点では会場がない。当然、地元のイベンターは死活問題に陥っている。福島県内のコンサート関係者は「年内のスケジュールは白紙状態」と嘆くほどだ。

 そういった状況の中、両県で計画されるのは「チャリティー・コンサート」である。

 実は、来る8月15日に福島市の「四季の里」という場所で、坂本龍一と福島県二本松市出身の遠藤ミチロウがジョイントでチャリティー・コンサートを計画している。

 聞くところでは、地元の若手作家が計画して、坂本らに提案したところ「やろう!」ということになったらしい。詳細は近日中にも発表されるだろう。ただ、入場は無料だというから、何らかの形で整理券を配布するのだろう。

 しかし、このチャリティー・コンサートの計画を聞いたときの率直な感想は、余りに無謀過ぎはしないかと言うことだった。

 確かに、チャリティー・コンサートをやることに異論はない。ただ、環境が整っていない段階でのコンサートには疑問を感じる。このコンサートで誰が得をする? 計画した地元の若手作家? 坂本龍一? 遠藤ミチロウ? ファン? しかし、全体的に考えたら「余りにリスキーなチャリティー・コンサート」としか思えない。

 どんなコンサートでも予算はかかるし、スタッフや警備員も必要だ。

 当日は「ステージを作らないでやる」なんて関係者は言っているが、坂本龍一と遠藤ミチロウのコンサートと言えば、ファンも集まるだろう。となったら、音響も電気も必要だ。しかし、コンサート当日のスタッフを含め準備するスタッフは全員がボランティアで協力することになるという。地元の音楽関係者は

 「それでも仕事がなくて困っているのに、チャリティーだから手伝えって言われても。坂本も遠藤も余裕があるからチャリティーが出来るのかもしれないけど…」。

 被災地支援だ!被災者支援だ!と、何でもチャリティーをやればいいってものじゃない。どうも、計画する側と地元には温度差があり過ぎるように思えてならない。

 しかも、福島市は、放射線の濃度の高い場所である。そこで、チャリティーだからと言って野外コンサートというのもおかしいし、何よりこの地域では未だに余震が続いている。非常時にどうするのか? ボランティアのスタッフばかりで何をどうするのか…? 地元の音楽関係者は「どういったコンサートを計画しているか分からないけど、遠藤がバンドなんかを引き連れてくるようなら、警察も納得しないでしょうね」。


 すでに、地元の新聞社などメディア関係などは「上層部から協力は控えろ」といった通達が現場に下りているという。「この状況の中、人を出す余裕はない」と表向きは言っているようだが、ホンネは「何か起こったら責任を取れない」ということのようだ。

 一体、誰の何のためのチャリティー・コンサートなのか?

 もちろん、「何かをしなければ…」という義憤に駆られたような気持ちは理解できるのだが…。


(渡邉裕二)

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