海外では、ミュージシャンと政治との関わりは珍しくはない。スティービー・ワンダーだったり、U2のボノだったり…。米国のカリスマ・ラッパー、エミネムが、当時大統領だったブッシュの再選を阻止するために新曲「モッシュ」を電撃発表した時には驚いたりしたが…。
では、日本では!?
70年代ぐらいにフォークが登場してきた時は勢いがあった。それこそ「俺たちの望むものは…」と歌い、若者の支持を得ていたものだ。しかし、時代は変わり、歌う内容も「傘がない…」と変わった。時代は大きく変わったのだ。基本的に、ミュージシャンも所属するプロダクションも政治や宗教といったイデオロギー的なものは避けようとする。その点が米国とは違う。フォークも時代と共にニューミュージックと言うようになった。
考えてみると、選挙なんかではタレントやお笑いなどは立候補するものの、ミュージシャンとなると意外に少ない。しかも、何故かロック系ミュージシャンとなると、さらに政治色が薄まる。何故なんだろう…。彼らからすると「世の中が悪い」「社会が悪い」とは叫べても、「政治が悪い」「政治を変えろ」と政治を語るのがカッコ悪い、ダサいと思っているだろうか?
…と、思っていたら、東京・新宿の歌舞伎町の“酔いどれロッカー”の異名を持つ4人組ビジュアル系ロックグル―プ “GELLONIMO(ジェロニモ)” のボーカリスト、雅(みやび=本名・金本真広)が、来月4月24日投票の東京都新宿区の区議選に出馬することになった。ミュージシャンの中でもビジュアル系のロッカーが首都圏の選挙戦に出馬するケースは異例だろう。雅は「石原慎太郎都知事によって失われた12年を取り戻したい」と、石原都政を批判するなど意気軒高なところを見せた。
雅は、山口県光市出身。現在43歳になる。十代の頃から音楽活動を始め、全国のライブハウスでライブを中心とした活動を続けてきた。95年にはビジュアル系ロックグループ、GELLONIMOを結成し「メジャー(体制)に対抗してきた」。雅のボーカルとライブパフォーマンスは人気で、多い時には年間で100本以上のライブを繰り広げたという。基本的にビジュアル系のロックというと女性ファンが多いが、彼らの場合は「男受け」するバンドとして知られている。
雅は、バンド活動の傍ら、ロックキッズが気軽に集まれる居酒屋を歌舞伎町で経営しているが「ここ数年、歌舞伎町を見続けてきたが明らかに活気が失われつつある」と一念発起し今回、新宿の区議選への出馬を決意した。
今回の出馬で、雅が訴えているのは昨年12月に都議会で決まった漫画やアニメの販売を規制する東京都青少年健全育成条例の改正案だ。「ロッカーとして、1人の表現者として納得することは出来ない。何が健全で、何が不健全なのかなんて、そんな条例で決めることじゃない」と言い切る。
もちろん、他にも訴えていることは多いが、改めて思うのは、若者に少なからずの影響力をもつミュージシャンが政治を語るというのは、時代的にも重要だろうと思う。正直言って、メジャーではなくインディーズ活動をしている “GELLONIMO” に、どれだけの訴求力があるかは分からない。しかし、人それぞれ考えは違うだろうが、ミュージシャンも徐々にでも政治や宗教などをタブー視せずに参加していくような世の中になって欲しいのだが…。
(渡邉裕二)