音楽ソフトは10年間で半減、CDショップは18年で5分の1に…
2010年12月22日
今やレコード産業は未曽有の苦境に立たされている。特に、CDやDVDといったパッケージ・ソフトは12年間連続で前年割れである。
日本レコード協会が発表している「レコード生産実績」を見ると一目瞭然だ。
CDなどオーティオソフトはピークだった98年が約6000億円強の市場だった。ところが、10年経った09年は僅か半分の3000億円強にまで下落、今年は、ついに3000億円の大台まで割り込んでしまった。
数年前のことだった。音楽配信が伸長してきた時は、業界内には「底打ちした」と、楽観視する声もあった。だが、今やそんな悠長なことは言っていられない。正直言って市場は蟻地獄か底なし沼に嵌ってしまった状態だ。
頼みの「音楽配信」も問題を抱えている。
いわゆる「有料音楽配信」の年間売り上げは900~1000億円程度だが、実際には違法な「音楽配信」というのが「その3倍以上ある」と言われているのだ。つまり、音楽配信だけでも3000~4000億円の売上げがあるというわけだ。この金額はパッケージ商品と同等の売上げになる。
しかし、その違法な音楽配信をなかなか減らすことが出来ないのが現状である。確かに、遺法サイトの摘発やキャンペーンも積極的に行っている。法的にも著作権法の一部改正した。しかし、罰則規定のない改正だったこともあって正直言って大きな効果は見込めない。
いずれにしても、CDショップの転・廃業というのは歯止めがかからない。日本レコード商業組合によると、発足した92年当時の加盟店は1822事業法人、店舗数3500店だったが、今では事業法人は400弱で、店舗数は700弱に落ち込んでしまっている。何と「この18年間で5分の1にまで減ってしまった」ことになる。
若者の街・渋谷からはHMVの第1号店だった「HMV渋谷店」が撤退、情報が集約され、ミュージシャンにとっては発信される場所でもあった「ヤマハ渋谷店」も12月26日で閉店される。かつては「渋谷系」という音楽ジャンルまで生んだ「渋谷」でさえ今や音楽文化を育むことが出来ない状況となっている(HMVジャパンを買収したローソンは、来年中にも渋谷に店舗を再出店することを明らかにしているが…)。
もちろん「CDが売れない」とは言っても、音楽全体を捉えたら需要は減ってはいないだろう。しかし、年々、危機的な状況に陥っていることは確かだろう。
今年は、嵐、そして、いきものがかりのアルバムがミリオンに届いた。
CDなどパッケージ商品が、この10年間で半減する一方、音楽の聴き方が「音楽配信」に変わっていくというのは、ある意味で時代の流れなのかもしれない。
しかし、そうは言っても、音楽ビジネスの基本は「パッケージ」と「配信」の共生・共存でしかないのも現実だろう。
渡邉裕二