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【Vol.63】2015年映画市場、動員と興収どれだけ伸びたか

映画部デスクの「映画興行あれこれ」

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【Vol.63】2015年映画市場、動員と興収どれだけ伸びたか

2016年01月14日
 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 当欄、久しぶりの更新となります。前回の更新から1年近くも空いてしまいましたが、また少しずつ、興行に関して、あれこれ書いていきたいと思います。

 さて、昨年2015年の映画市場は好調で、前年を上回った模様です。正式な発表は1月26日に行われる映連の記者会見を待ちますが、年始の様々な場での公式的なコメントを総合すると、2014年の2070億円を超えて2100億円台。これまでの最高記録である2010年の2207億円に迫る勢いということです。

 私も年明けから興行各社、各館に2015年の数字を聞いていますが、その大半で前年を上回っているという回答を得ました。新館オープンのあった会社は当然ながらその分が上乗せになっていますし、既存館ベースでも上回る傾向が出ています。

 公表されている会社では、東宝グループ(664スクリーン)が興収626億円で前年比10.4%増。ヒューマックスシネマ(24スクリーン)が興収26億5千万円で15.3%増。

 名古屋の中日本興業は、2つのシネコンで年計の新記録を叩き出しました。名駅前のミッドランドスクエアシネマが14億99百万円で8.0%増、ミッドランドシネマ名古屋空港が9億87百万円で1.7%増でした。中日本以外でも、新記録の出ている映画館は多数あります。

 興収上位作品を、先に挙げた2010年と比べていくと2015年に特徴がはっきりと出てきます。2010年は『アバター』『アリス・イン・ワンダーランド』『トイ・ストーリー3』が興収100億円超え。以下、邦画の『借りぐらしのアリエッティ』が92億円、『THE LAST MESSAGE 海猿』が80億円、『踊る大捜査線3』が73億円、洋画の『カールじいさんの空飛ぶ家』が50億円。ここまでが興収50億円以上です。

 2015年は、洋画で『ジュラシック・ワールド』と『ベイマックス』が90億円超え。『シンデレラ』『ミニオンズ』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』が50億円超え。邦画は『妖怪ウォッチ』78億円、『バケモノの子』58億円が50億円以上の作品です。

 2015年は100億円超えがなく、ヒットのスケールは2010年よりも明らかに小さいけれども、年間を通して好調な成績を残せました。20億円、30億円、40億円といったクラスの作品が頻発して、シネコンのラインナップが充実し、全体的な稼働率が高まりました。突出した作品がなくても、これだけの数字があがるという好例ができたと思います。

 2015年の特徴の一つが、体感型設備の集客力でした。夏休みをはじめ、大作映画がIMAXシアター、4Dシアターで人気を集めました。客単価が上がり、興収の伸び率を動員のそれよりも高める効果を発揮しています。

 興収がどれだけ伸びたかにどうしても注目が集まりがちですが、一方で、動員がどれだけ増えているのかも、非常に重要です。年始にあたり、冷静に見ていく必要があると思います。 




松本 貴則(まつもと・たかのり) 月刊文化通信ジャーナル編集長 兼 映画部デスク 

2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げる。2011年から映画部デスク。2014年から月刊文化通信ジャーナル編集長を兼務。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。




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