【Vol.61】6月閉館、シネマート六本木の10年間を振り返る
2015年02月06日
エスピーオーが、映画館「シネマート六本木」の閉館を発表した。閉館日は6月14日(日)を予定。「シネマート試写室」としての営業は、少し早い5月末日で終了する。
同館は2006年3月、ディスコがあったビルを全面改装して4スクリーン、計440席でオープンした。韓流ブームもあるなか、オープン当初から「アジア映画の専門館」を標榜。アジア映画を中心に、多彩な作品の受け皿として独自のポジションを築いてきた。オーナーはパチンコ店運営の日拓。10年間の定期建物賃貸借契約が今年8月8日で期間満了を迎えることから、閉館が決まった。契約に基づき、エスピーオーは原状回復をした上で撤退することになる。ただし、シネマート六本木撤退後のビルが何に使われるのかは不明。経年劣化も進んでいることから、再開発などが計画されているかもしれない。エスピーオーはオーナー側と、今後の対応を詰めていくことになる。
今回の閉館の報を耳にし、私自身の中で、シネマート六本木をめぐる10年を振り返ってみた。韓流ブームがあり、ある種、鳴り物入りでオープンしたシネマート六本木だったが、運営面でかなりの紆余曲折があったのも事実。同劇場の開発を統括していた担当者は、とうの昔に同社を去っている。
韓国映画などアジア映画中心の番組編成で底堅い営業をしてきたが、収支を考えるとやはり厳しい面もあったと想像がつく。その打開策の一つが、不動産としての有効活用だったと言える。2009年には1スクリーンを多目的ホールとする方針を打ち出した。また、銀座試写室の閉鎖(2011年5月)に伴い、六本木の映画館を試写室としても開放。その時々で4スクリーンの用途を、興行や試写、イベントなど柔軟に組み合わせた。
それに先立ち2007年12月には、イベント用の広めの2階スペースに事務所を移転した。前事務所は、銀座試写室と同じ東銀座の南海ビルにあった。このようにスクリーンの多目的化・有効活用、事務所の移転など、ビルの収支を改善する努力を常に続けてきた歴史が、この10年にはある。
同社の興行事業は、六本木と同じ2006年に開業した2サイト、東京・新宿と大阪・心斎橋の2つに集約される。新宿は昨今、韓国映画の編成が充実してきた。六本木で上映していた作品の一部が、これからは新宿に行くのだろうか。
同じ六本木では、TOHOシネマズ六本木ヒルズのリニューアル工事が進む。こちらは2003年4月のオープンから約12年、新たな設備投資を行い3月13日に新装オープンする。
松本 貴則(まつもと・たかのり) 映画部デスク 兼 月刊文化通信ジャーナル編集長
2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げる。2011年から映画部デスク。2014年から月刊文化通信ジャーナル編集長を兼務。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。