久しぶりであります。どっこい、わが「興行戦線異状なし」は続いております。では早速に、今年15年の正月興行の作品別最終興収がまとまったのでお伝えする。「妖怪ウォッチ」と「ベイマックス」が、熾烈なトップ争いを繰り広げている。さあ、上位作品を見てもらおう。
(1位)「ベイマックス」80億円~
(2位)「映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」74~75億円
(3位)「寄生獣」20~21億円
(3位)「THE LAST ―NARUTO THE MOVIE―」20~21億円
(5位)「アオハライド」18~19億円
(6位)「ホビット 決戦のゆくえ」15~16億円
(7位)「バンクーバーの朝日」14~15億円
(数字は一部推定)
ここには入れなかったが、「ゴーン・ガール」「インターステラ―」「フューリー」などの洋画が、これに続く展開である。
注釈が必要だ。「ベイマックス」と「妖怪ウォッチ」は、現時点では「妖怪ウォッチ」のほうが興収は上である。だが、10代から30代の若い男女の観客が多い「ベイマックス」は、口コミ効果もあって、今後もある程度の集客を見せていくだろうとの推測ができる。
反面、「妖怪ウォッチ」の客層は、親と子どもたちが大部分であり、正月の休み期間で、相当部分の集客が終わっている。正月明けの土日も健闘しているが、「ベイマックス」の追い込みには、叶わないといったところだ。つまるところ、今後の動員の伸び方の点で、この2作品は決定的な違いがあるということである。
この2本だけを見れば、充実した正月興行ということになろう。だが、興行は甘くはない。邦画と洋画の実写作品が、思ったほどのヒットにならなかったのだ。
この部分を突っ込んでいくと長くなるので、簡単に言うと、まずもって大人が見たくなるような作品が少ないということだ。正月は、ふだん映画を見ない人でも、ちょっと映画でも見てみようか、となる。いわば、正月の映画は、“風物詩”みたいなものと考えてよく、人々のそうした“マインド”志向に、映画の編成が対処して切れていない印象をもつ。
大人の作品が、ないわけではない。大人が関心を持ちたくなるような作品が、少ないということである。これは結果論ではない。「バンクーバーの朝日」など、その1本になってしかるべきだったのに、地力が弱い。いいテーマを持ちながら、それを強く打ち出すべき中身に力がないからである。
編成のあり方でいえば、「フューリー」など、正月の休みに入る前に、上映回数が減ってしまっている。まさに大人向きのこの作品が、見たいときに見られない状況を、映画館側が作り出していると言えようか。もったいない、という言葉が浮かんでくる。
日米のアニメが、両立したかのような成果を見せた今回の正月興行は、確かに素晴らしい。だが、昨年の正月興行と比べて、全体の興収が飛躍的に伸びているわけではない。他の作品が、伸び悩んだからである。映画興行は、大人を逃してはいけない。これは、この正月だけの話ではない。
(大高宏雄)