【Vol.59】2014年は2千億円台回復も「天国と地獄」味わう
2015年01月16日
遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、昨年2014年の映画興行は、どんな成績だったのか。その詳細は映連が1月27日に行う恒例の記者会見で明らかになるが、年明けの映画業界人の言葉を拾うと「2千億円台の半ば」「2千億円台に回復」といったものがあった。どうやら2010年以来の興収2千億円台というのは間違いなさそうだ。
仮に2050億円だとすると、前年の1942億円から5.5%増となる。参考までに、日本で一番稼ぐシネコンである新宿ピカデリーは、前年から5.7%伸びている。
興行会社にヒヤリングしたところ、その大半から前年の興収を上回っているとの回答を得た。5~10%前後の増加率が多い印象だ。10社以上に聞いたのだが、増加率が最も大きなところで17%、逆に小さなところで2%くらい。2%増だと、税抜で計算すると実質的にはマイナスになるのだろう。
大きく増やした会社の場合、増税効果に加え、新館オープンによる積み増し、4DXなど設備投資による集客増、近隣館の閉館による新規顧客の流入、番組の差別化、ライブビューイングをはじめとするODSの強化などがあったようだ。
一方で、伸び率が小さかった会社あるいはマイナスだった会社の場合、近隣に競合館ができてシェアが縮小したり、劇場を閉鎖したりというケースがある。
プラスの場合もマイナスの場合も、単純に一喜一憂というわけにはいかない。興収は減っても、利益率が高まっていることもある。各社、各館で事情があるから、それらを慎重にみていく必要がある。
各社に聞いていくなかで、昨年の実績に対して、手放しで喜んでいる人は皆無だった。増税=料金アップへの懸念を『アナと雪の女王』が吹き飛ばし、夏までに大きな貯金があった。しかし終わってみれば、「いつもどおり」の範疇に収まった。10月、11月の落ち込みようが半端ではなく、まさに「天国と地獄」を味わった1年だったのではないか。
2015年がどんな年になるのか。もちろん、まだ分からない。しかし、東京・新宿の状況変化など、大きなターニングポイントになる予感はある。
一つひとつの出来事を丹念に追いかけていく。そんな1年にしたい。
松本 貴則(まつもと・たかのり) 映画部デスク 兼 月刊文化通信ジャーナル編集長
2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げる。2011年から映画部デスク。2014年から月刊文化通信ジャーナル編集長を兼務。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。