【Vol.58】池袋の新シネコンが持つ意味を考える
2014年12月17日
佐々木興業が東京・池袋に新しいシネコンを建設する計画を発表した。首都圏最大級となる12スクリーン、約2600席を誇る。レーザー技術による次世代IMAX、4DX、ドルビーアトモス、ヴィヴ・オーディオといった最新鋭の映像・音響システムを集めるという。新シネコンの名称は未定だ。
場所は、既存のシネマサンシャイン池袋から歩いてすぐ。今年3月に営業終了したスポルト池袋(ボウリング、ゲームセンター等)の土地を同社が購入。今ある建物を15年に解体、同社が16年から新ビル建設に着手し、17年に開業するというスケジュール。新ビルは15階建てで、地下1階~地上3階を商業施設、地上4階~15階を新シネコンが占める。
この建設計画は以前から噂には出ており、一部では「100億円プロジェクト」などと言われてきた。
今回の建設計画の発表で、注目したいことがある。その一つは、既存館のシネマサンシャイン池袋(6スクリーン、1357席)を閉館しないということ。これにより、同社は東池袋に計18スクリーン、約4千席を有することになる。これは、とても大きなことだと思う。
池袋では、別のシネコンが新設される可能性も浮上しており、そこに対する牽制の意味合いもあるだろう。
また、IMAX、4DXは、いわば「諸刃の剣」。強力な集客装置ではあるが、上映作品の選択肢が限られ、その作品が外れた場合に他の作品で手当てができない。つまり、IMAXや4DXを導入することは、実質的にスクリーン数を減らしてしまうことにもなる。実際、そうした弊害は出ている。
しかし、佐々木興業の池袋における体制では、この問題を難なく解決する。全国のIMAX導入館、4DX導入館と比べても新シネコンの12スクリーンという規模は大きいし、既存館を残すことで、番組編成の幅を十分に確保できる。なお現時点で、IMAXと4DXの両方が1つのシネコンに導入されるケースは、この池袋の新シネコンが初である。
課題もある。既存館はサンシャイン60通り、新館はサンシャイン通りと、別々の通りに面している。たかが1本の違いだが、行き交う人々の数がまったく異なる。サンシャイン60通りは国内有数の通行人数を誇る商店街であり、ここから既存館へ流れ込む。新館の面するサンシャイン通りまで、どのように新しい人の流れを生み出すのか。それが実現できれば、爆発的な動員力を発揮する可能性がある。
池袋に立地する他の映画館への影響も計り知れない。池袋には現在、名画座や成人映画館も含めて18スクリーンある。極端な話だが、佐々木興業の計18スクリーン、4千席があれば、今の池袋の興行全部を賄えてしまうわけだ。
佐々木興業は本日、池袋で記者会見を行い、新シネコンについて改めて説明する。どんな発言が出るのか、楽しみである。
松本 貴則(まつもと・たかのり) 映画部デスク 兼 サイト事業部所属
2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。