閲覧中のページ:トップ > 文化通信バラエティ > 映画部デスクの「映画興行あれこれ」 >

【Vol.51】恵比寿ガーデンシネマが来春オープン

映画部デスクの「映画興行あれこれ」

最新記事

【Vol.51】恵比寿ガーデンシネマが来春オープン

2014年09月11日
 前回の当欄で書いたミニシアターの復活とは、すでにご存知のとおり、恵比寿ガーデンシネマである。同館が営業をやめたのは2011年1月28日のこと。振り返れば、この時の表現は「閉館」ではなく「休館」だった。休館したまま営業再開しないケースは多々あるが、恵比寿については復活を遂げることになった。「YEBISU GARDEN CINEMA」という館名表記で、2015年春にオープンする。

 休館当時の運営会社は、角川シネプレックス(旧ヘラルド・エンタープライズ)だった。そして今回は、恵比寿ガーデンプレイスを所有するサッポロ不動産開発とユナイテッド・シネマによる共同運営という形態をとる。旧恵比寿ガーデンシネマ跡地では現在、Kポップアーティスト専用劇場が営業しており、今年12月末日で契約満了を迎えることを受け、映画館を再開させることになった。サッポロ側の意向が強く働いた模様だ。

 ここでおさらいをすると、ユナイテッド・シネマは昨年、角川シネプレックスを吸収合併している。つまり、かつて恵比寿ガーデンシネマを休館した会社が、めぐりめぐって、もう一度運営を手掛けることになったという不思議な流れがある。かつ、買収時に「付属していた」大阪の梅田ガーデンシネマについては、今年2月に閉館し、3月から東京テアトルが継承した。それによってユナイテッド・シネマは完全にシネコン専業の興行会社になったのだ。そう思った矢先に、この恵比寿の復活である。ユナイテッド・シネマは梅田から撤退した時点で、ミニシアターに関する社内の番組編成機能をなくした。恵比寿再開にあたり、それも復活させた。

 シネコンとは全く異なるミニシアターに再び着手する意味とは何だろうかと、深く考えざるを得ない。ただ、一つ忘れてはいけないのは、ユナイテッド・シネマそのものが、ここ数年、激動の時を過ごしてきたことだ。ユナイテッド・シネマは1999年の創立時、英UCI、住友商事、角川書店(現KADOKAWA)の共同出資で設立。旧恵比寿ガーデンシネマが休館した時、ユナイテッド・シネマは住友商事の完全子会社だった。2012年に投資会社のアドバンテッジパートナーズに買収され、昨年はアドバンテッジが角川シネプレックスとユナイテッド・シネマを合併させた。そして今年8月、ローソンの完全子会社であるローソンHMVエンタテイメントがユナイテッド・シネマの親会社になった。

 新旧の恵比寿ガーデンシネマを運営するのは、ユナイテッド・シネマ(=角川シネプレックス)という同一の興行会社だが、その実態はまったく別物だと考えるべきだろう。今回のユナイテッド・シネマおよび恵比寿ガーデンプレイスそれぞれのプレスリリースを読む限り、かつての恵比寿ガーデンシネマとはかなり趣の異なる映画館が誕生しそうだ。楽しみであり、また、成功を祈るばかりである。




松本 貴則(まつもと・たかのり)  映画部デスク 兼 サイト事業部所属

2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。




過去のタイトル一覧

2016年

1月│ 2月│ 3月│ 4月

2015年

1月│ 2月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2013年

4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月