【Vol.48】ユナイテッド・シネマをローソンが買収
2014年08月07日
ユナイテッド・シネマ(UC)が、ローソンの傘下に入ることになった。UCの親会社であるユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングス(UEH)の全株式を、ローソン完全子会社のローソンHMVエンタテイメント(LHE)が8月28日付で取得する。
ユナイテッド・シネマをめぐっては、近年、動きが非常に激しい。2012年3月、UEHに出資しUCの実質的な親会社である投資会社アドバンテッジパートナーズ(AP)が、住友商事からUCを買収。翌2013年3月には角川グループからシネプレックスを買収し、同年6月にUCと合併させた。そして、今回のローソンである。
APがUCを買収した段階で、そう遠くない将来、今回のような着地点に達することは予想されていた。UCはファンドによる投資案件。APはUCの企業価値を高めた上で、上場もしくは投資額以上での売却を目指すのが既定路線と考えられるからだ。
この2年間、経営支援を行うリヴァンプの協力を得ながら、各所において改善を進めてきた。それと並行して、おそらく、常に「売り時」を考えていたのではなかろうか。今年に入り、UC売却をめぐる話題は頻繁にのぼるようになっていた。
一部報道によると、ローソンへの売却額は100億円以上。APがUCを買ったのは、数十億円と言われている。これらの金額が本当だとすると、UCは投資案件として成功ということになる。今年3月公開の『アナと雪の女王』のメガヒットが、売却額を押し上げた面もあるだろう。
ローソン傘下に入り、UCはどのように運営されていくのか。ローソン側が役員、社員の人事や組織のありようを決めていくのは当然として、武藤社長は続投できるのか。また、従業員の雇用はどう守られるのか。この2年で、元々のUCの社員、元々のシネプレックスの社員はいずれも相当な人数が退社の道を選んでいる。
社名はどうなるのか。現在、UCとシネプレックスの両ブランドがある館名は、変わるのか。様々なサービスは変わるのか。そして、ローソングループの中で、どんなシナジーを生み出せるのか。予定する施策はたくさんある。それがどう実を結ぶのか。
株主が変われば、会社は変わる。それは仕方がない。でも、従業員のこと、それから、観客のこと、もちろん映画業界のこと、こうしたことを忘れず、真剣に目を向けてほしい。
松本 貴則(まつもと・たかのり) 映画部デスク 兼 サイト事業部所属
2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。