【Vol.44】坂上直行氏×澁谷敏旦氏の対談
2014年06月30日
掲載先の「JAGZY」は、日本の(=J)、遊んでいる(=A)、元気な(=G)、オヤジ(=ZY)を支援するWEB媒体。R50、R60男性向けに人生充実のための情報を提供する。日経BP社(日経ビジネスオンライン)と全日空(ANA)、ニコンイメージングジャパン、大和ハウス工業など媒体趣旨に賛同した企業が共同で運営している(同サイトの説明文より抜粋)。
その中のコンテンツの一つに、「JAGZY交友術」というコーナーがある。ホスト役の元ビクターエンタテインメント社長・澁谷敏旦氏が、エンタメ業界の著名人をゲストに迎え、大いに語り合う。その第3弾が、坂上氏との対談だった。
これが、読ませる。澁谷氏と坂上氏はもともと親しい間柄。言葉のやり取りの端々から、二人の関係が伝わってくる。お堅いインタビューではなく、むしろ雑談といった感じ。とはいえ、濃密な中身。だから、面白い。
ポイントはいくつかあるが、一つは、坂上氏の来し方。学生アルバイトから日本ヘラルド映画に入り、そこから重ねた業界での43年間を振り返る。それは必然的に、時代の変遷、映画業界の歩みをたどることにもなる。ヘラルド全盛期のこと、その当時の宣伝の手法(インターネット以前)、洋画から邦画へのパワーシフトなどに触れる。その時々の仕事に、真剣に、でも楽しみながら取り組んできた。その語る言葉が生き生きしている。
また、映画を通じて、仕事や人生にどう向き合ってきたか。例えば、「映画は好き」と前置きした上で、映画について、人と関係を作る「手段」「出会いの場」と言い切っている箇所を読んで、坂上氏の根っこの部分に触れたような気がした。
一方、澁谷氏の発言も鋭い。買付けについて「不思議なんだけど、絶対買って帰ってくるじゃない。当たらないやつも、当たるような気がして。何も買わないで飛行機とホテル代だけの方がよっぽど安くつくのにね?」と。ふむふむ。また、坂上氏を前にして「坂上さんは言いたいことを結構辛辣に言うし、むっとさせることもあるんだけど、なぜか嫌われないんだよ。何か気になるんだよね。不思議な人だよね」と。言い得て妙だ。
「オレはもう引退するから」。坂上氏は私と会うたびに、そう言う。その発言の本気度は不明だが、その精力ぶりからいって、まだまだ引退するような段階ではないと断言できる。R50、R60向けの媒体だが、この対談に関しては、若い人にこそ読まれるべきだと思う。得られるものが沢山ある。
松本 貴則(まつもと・たかのり) 映画部デスク 兼 サイト事業部所属
2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。