【Vol.43】日本橋が好調、年間動員100万人が射程に
2014年06月18日
今年3月にオープンしたTOHOシネマズ日本橋が、賑わいをみせている。年間動員100万人を目指すとのことで、相当にハイレベルな出足となったようだ。
TOHOシネマズの発表によると、3月20日のオープンから5月31日までの2カ月余りで動員23万6千人、興収3億9千万円を記録した。他館と比べると、好調ぶりがよく分かる。同期間の動員で比較すると、TOHOシネマズ渋谷の91%、TOHOシネマズ六本木ヒルズの92%。渋谷と六本木は例年、100万人の年間動員を達成している。日本橋は2カ月余りで、既存2館の9割強の水準に達した。日本橋は認知度がさらに高まり、固定客が増えて、これから動員の伸びも予想されるため、年間動員100万人は十分に現実味がある目標だといえる。
初年度は70万人がメドと聞いていたので、大成功のスタートである。オープン前には、業界内でシビアな意見もあった。日本橋という街に映画興行の需要があるのか。どんな客層なのか。平日昼間のシニア層は見込めそうだが、平日の夜は仕事帰りの社会人が立ち寄るのか。土日はきちんと稼働するのか。そうした懸念は杞憂に終わった。他のシネコンと同様、老若男女が劇場に足を運んでいる。入居先のCOREDO室町が人気を集め、日本橋の街自体が改めて脚光を浴びていること、興行においては3月公開『アナと雪の女王』の快進撃の波に乗ったことも、大きな成功要因だろう。
TOHOシネマズ日本橋は、立体音響のドルビーアトモス、幅広のプレミアボックスシートを導入。内装は落ち着いた雰囲気があって、居心地も良く、土地柄もあり、やや高級な印象を与える。しかし聞くところによると、建設コストはかなり抑えているとのことで、損益分岐点がどの程度かは不明だが、会社にとってはかなりの利益貢献をするのではないだろうか。
これから見ていかなくてはいけないのは、日本橋の好調の一方で、都内の他の映画館にどれだけの影響が出ているかということ。まずは、マリオンを始めとする有楽町・日比谷・銀座地区。番組編成も含めて見ていく必要がある。
さてTOHOシネマズは、TOHOシネマズ日本橋を起点に都心出店戦略を開始したが、日本橋の好調を受けて、これが加速するのではないだろうか。新宿(2015年春オープン予定)と上野(2017年秋オープン予定)の2サイトをすでに発表済みだが、どんな仕掛けを行っていくのか、楽しみだ。
松本 貴則(まつもと・たかのり) 映画部デスク 兼 サイト事業部所属
2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味は空手、サッカー、野球、スポーツ観戦、読書。