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【Vol.36】イオンE社長交代で思うこと

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【Vol.36】イオンE社長交代で思うこと

2014年04月10日
 イオンエンターテイメントの社長が交代した。3月31日付で新社長に就任したのは、イオン(株)グループ人材育成部長だった牧和男氏。前社長の大島学氏はイオンエンターテイメントでの職務から離れた。

 大島前社長は2013年5月にワーナー・マイカル社長に就任。同年7月にワーナー・マイカルとイオンシネマズが経営統合した後はそのまま、新発足したイオンエンターテイメントの社長に就いた。以来、矢継ぎ早に様々な施策を行い、業界内の注目を一気に集めた。しかし、1年足らずでの社長交代。まだ「種まき」の途中であり、「収穫」の季節を待たず。大島氏はとても精力的で、強い行動力を感じていたので、もう少し大島氏の舵取りを見てみたかったのが正直なところだ。

 そして、今回社長に就任した牧氏。職歴をみると、1985年にイオン(当時ジャスコ)入社。1995年4月から新事業企画部課長を1年半ほど務めた後、1996年11月にイオンのグループ企業であるメガペトロに異動。2012年5月にイオン(株)グループ人材育成部長に就任するまで、メガペトロに15年以上在籍したことになる。

 このメガペトロという会社はイオン、三菱商事、三菱商事石油による合弁会社で、ショッピングセンターの駐車場内にガソリンスタンドを展開している。この会社で牧氏は、店舗運営部長代行、人事総務部長、取締役を歴任し、常務となってからは営業や経営管理を担当していた。

 このような経歴の持ち主が、なぜイオンエンターテイメントの社長になったのか。前社長の大島氏はイオン(株)で秘書部長、グループ人事最高責任者、執行役員となってサービス事業最高経営責任者などを歴任していたので、大島氏の社長就任はイオンエンターテイメントのグループ内での位置づけとともに、ある程度は腑に落ちるものだった。一方で、牧氏の経歴はイオンエンターテイメントに直接的には繋がらなさそうだが、経営陣としてのものの見方、店舗運営や人材育成のノウハウなどはイオンエンターテイメントに生かせると言えば確かにその通りだろう。

 牧氏の社長就任の狙いや背景など、分からない部分が多い。ただ、今回の人事を見てはっきり分かったこともある。それは、イオングループという巨大な企業体が動いていく中で、イオンエンターテイメントの社長はいつでも代わり得るということ。かつ、基本的には映画業界に不案内な人選になるということ。資本の論理に従えば当然で、それに対してどうこう言うつもりはなく、むしろ従来とは異なる視点によって新たな発想が生まれることを歓迎したい。組織のありようも含めて、イオンエンターテイメントがどう変わっていくのか。従業員、業界、映画ファン…誰もが喜ぶような方向に進んでいくことを望む。




松本 貴則(まつもと・たかのり)  映画部デスク 兼 サイト事業部所属

2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味はスポーツ観戦、読書。





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