先週末に行われた神戸新聞杯は、エピファネイアが圧勝でしたね。あのレースができるなら本番の菊花賞でも勝てる可能性は高いでしょう。
さて、個人的にはレース後の勝利騎手インタビューが非常に印象的でした。福永祐一騎手です。なんというか、凄い気迫というか、単なる「喜び」や「充実感」では表現できない、迫力のようなものを感じました。
これくらい頻繁に重賞を勝っている騎手なら、勝利騎手インタビューは馬の状態やレース展開をササッと説明した後、ファンに向けて「次も応援してください」とコメントする程度が普通。しかし今回の福永騎手は全然違った。
特に、「(エピファを)真っ向勝負で抑えることができないと、これから騎手を続けていく上で超一流馬は乗りこなせない」と語ったところは、この馬での結果次第で自身の評価が決まるという、覚悟を感じました。
福永騎手と言えば、G1を16勝もしている、文句なしに中央競馬のトップジョッキー。しかし、そのG1の内訳は短距離や牝馬限定レースが多く、牡馬クラシックや有馬記念、天皇賞やジャパンカップといった、G1の中のG1は勝てていないのが実状。それは、ファンはもちろんですが、本人が一番意識していることでしょう。
昨年はアメリカ修行を敢行するなど、何とかこのはがゆい現状を脱するべく、もがいている様子はこちらにも伝わってきます。しかし、この遠征の間にお手馬のロードカナロアが岩田騎手に渡り、超一流馬に育ってしまうなど、歯車が合っていない感じも受けました。
今年は、神戸新聞杯の前まで重賞はたったの1勝。特に、日本ダービーでエピファネイアと優勝を目前にして、最後の最後にキズナに差された様子は、ちょっと悲惨でもありました。レース後の表情も本当に悔しそうでしたし、「馬(の力)は足りていた。足りないのは自分」と語っていたのも非常に印象的でした。
そして今回、神戸新聞杯のレース前インタビューで、「結果を出さなければ次は乗せてもらえない」という、背水の陣で臨んでいることがわかりましたし、実際にレースでも様々な意図が感じられました。
スタートした後は、変に後方に下げず、中団より少し前からの競馬。凄いパワーで引っかかるエピファネイアですから、普通は後ろの方で、馬群を壁にして競馬したいところ。しかしあえてそれをせず、正攻法の競馬、前に馬がいない状態で、腕力で馬を制御し、自分の意のままにコントロールする。そして4角で先行集団に取りつき、早め先頭でそのまま押し切る。まさに「これぞ横綱相撲」という競馬で、圧勝しました。
ダービーで惜敗した後は、厳しいトレーニングを積んできたようです。その思いや、今までのはがゆさが、今回の神戸新聞杯の勝利でかなり吹き飛んだのではないでしょうか。今までにない、福永騎手の強い口調のインタビューが、それを物語っていると思いました。
とはいえ、今回はあくまでトライアルレース。本番の菊花賞を強い競馬で勝った時、本当に福永騎手が一皮むけたと言える気がします。ちょっとメンバー的に薄いかなと思っていた菊花賞ですが、福永騎手が牡馬クラシックを初めて勝つことができるか、ここに大いに注目したいと思います。