【Vol.15】上野エリアにTOHOシネマズ出店決定
2013年08月27日
TOHOシネマズが、東京の上野エリアへの新規出店を発表した。本館と南館からなる松坂屋上野店、その南館の建て替えで建設される高層ビル「新南館」が2017年秋にオープン。その7~10階部分にシネコンを出店する。最寄駅は上野というよりも御徒町。JR御徒町駅から徒歩2分の立地だ。
スクリーン数、座席数をはじめ詳細は未定らしい。どんなシネコンが誕生するのだろうか。楽しみだ。
この“楽しみだ”の意味は、大きく二つある。一つは、内装デザインや設備面、サービス面など観客が直に触れる部分で、何か目を引くものがあるのだろうかという意味。シネコンはそれぞれの会社の標準モデルがあり、運営・管理の面からもそこから逸脱することはなかなか難しいが、“上野らしい何か”があるのかどうか。
もう一つは、“上野で映画を見る”という行動パターンをどう復活させるのかという意味だ。こちらの方が、より重要だろう。かつて上野には多くの映画館があったが、東京近郊のシネコンに客足が流れ、次々と閉館。上野エリアでは、映画興行が成り立たなくなったと各社が判断したのだった。今では、大蔵映画が成人映画館を運営するのみで、一般の映画を見ることは一切できなくなった。
東宝も、上野東宝と上野宝塚という2館を1954年から2003年までの48年間、営業してきた。今回この地に新たに出店するというのだから、まさに“復活”となる。
もう一度、上野に映画ファンを連れ戻せるのか。それには、どういう方法をとるのか。新南館にはシネコンの他、大丸松坂屋百貨店の飲食フロア(地下1階)、パルコ(地上1~6階)、オフィス(地上12~22階)が入る。こうした複合施設としての総合力が、ポイントのひとつとなるだろう。
今年、シネコンが国内に誕生して丸20年が経過した。最初の10年余りは大都市の近郊に続々とシネコンが誕生。その影響をもろに受けて、かつて興行の重要拠点だった繁華街のいわゆる既存館は、どんどんなくなっていった。
ところが、この5、6年だろうか、駅前や繁華街などに新しくシネコンを作る、いわば揺り戻しのような状況が起きている。少子高齢化などに伴う都心回帰という国内状況が背景にあるのだが、こうして作られたシネコンは好成績を上げているケースが多い。一番顕著なのは、新宿エリアだ。
4年後、上野エリアはどうなっているのか。上野から御徒町にかけての街並み、人の流れは変わるのか。シネコンにはどれだけの人が集まるのか。周辺への影響も見逃せない…。早くも関心の度合いが高まっている。
松本 貴則(まつもと・たかのり) 映画部デスク 兼 サイト事業部所属
2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味はスポーツ観戦、読書。