彼女と初めて会ったのは今年の2月だった。
彼女はバイオリンを弾きながら3曲披露してくれた。とにかく透き通ったボーカルが印象的だったことを覚えている。
宣伝担当者は「100年に1人の天性のボーカリスト」と訴えた。
100年に1人というのは、ちょっと大げさだろう…と思いつつも気になっていた。
それから3ヶ月。その彼女が、ついにデビューした。
豪シドニー出身のボーカリストでバイオリニストのサラ・オレイン。現在26歳である。6月20日にアルバム「セレステ」で日本デビューした。いわゆる “癒し系” のボーカリストと言ってもいいかもしれない。とにかく、聴いていて心地いい。
アルバム「セレステ」のタイトルは「天使」を表している。
「日本で発売するアルバムなので、内容的にはあらゆるジャンルのハートフルな名曲を私なりにセレクトしてみたんです」とサラは言う。
収録曲はカナダの女性シンガー、ジョニー・ミッチェルの「青春の光と影」からオフコース(小田和正)「言葉にできない」まで、特に70年代にヒットした作品を中心に選曲している。サラは「40~50代の人の心に響くメロディを厳選した」と、コンセプトも明快に説明する。
彼女は、幼少の頃からバイオリン・コンクールなどに出場し優勝を重ねてきた。06年に豪シドニー大学に入学するも、08年に東京大学に留学した。英語の他、日本語、イタリア語の3ヶ国語を自由に操る才女だったこともあって、日本では学生の傍ら絵本の翻訳や英ロンドンの広告代理店から依頼を受けてコピーライターの仕事にも携わってきたという。
10年にシドニー大学を首席で卒業した彼女は日本での活動を決意した。
「任天堂Wiiのゲームソフト『ゼノブレイド』やスクウェアエニックスのiPhone向けRPG『ケイオスリングス オメガ』の音楽を担当してきました」という。
そういった中で今回の日本デビューが決まった。
「彼女は、バイオリニストとしてはシドニーの国会議事堂でも演奏している他、ボーカリストとしては世界のオペラ歌手、イヴォンヌ・ケニー(ソプラノ)やホセ・カルボ(バリトン)とも共演しています。3オクターブの音域でエンヤやマライア・キャリーと並ぶ、まさに天性のボーカリスト」
ユニバーサルインターナショナル ジャズ&クラシック宣伝グループの宣伝担当者は彼女の魅力をアピールする。
アルバムの収録曲には、自らのオリジナル曲も収めているが、中でも「ザ・ファイナル・タイム・トラベラー」は、7月12日に発売される任天堂の話題のアドベンチャー・ゲーム「タイムトラベラーズ」のエンディング曲になっている。
7月27日には神奈川県の葉山マリーナで開催される「真夏の夜のJAZZ」にも出演。さらに11月9日に東京・恵比寿ガーデンホールでデビューコンサートも決定した。
とにかく聴いて損のないアルバムである。
(渡邉裕二)