【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.73】
シネコンシステム、考えるべき時期に来た
2012年03月27日
春興行が佳境であるが、どうにもしっくりこない。成績が極端に悪いということではない。スタートは何とか盛り上がりを見せる作品でも、2週目、3週目になると、数字を落としていくのである。こうした傾向が顕著なのがとくに洋画で、結局今年の春興行の作品で、最終興収20億円を超えるのは、現時点では1本もない見通しとなった。
今年の春興行の洋画は、私は話題に事欠かなかったと思う。「ヒューゴの不思議な発明」「戦火の馬」の2大有名監督作品に、ヒット作品の続編「シャ―ロック・ホームズ シャドウゲーム」、CGアニメ大作「長ぐつをはいたネコ」、そしてアカデミー賞主演女優賞受賞の「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」など。それぞれの話題に合わせて、いずれも十分に勝負に出た作品ばかりであった。
作品の中身については、もちろんいろいろな意見があろうが、ここではシネコンにおけるシステム的なことを指摘しておきたい。これが、数字が落ちていく一つの大きな要因だと思われるからだ。
それは、上映作品の多さから生まれている一種の弊害とも言っていい。相応に成績を上げた作品であっても、2週目、3週目になると、新作に上映回数を“奪われる”。結果、その作品の上映回数が少なくなっていくことが、かなりひんぱんなのだという。この事実はシネコン関係者が断言しているので、間違いない。
これは、物理的な問題とも言える。1週目は、当初の予定どおりに上映が行われる。だが以降では、作品の数が多いので、必然的に上映の回数が減っていくのは、その作品を上映したくてもできないからである。当然、ヒット作品の優先順位によって回数が決まっていくわけで、最初に動員が大きく“かぶって”こない作品は、だから厳しい2週目以降になってしまう。
いつも言われていることではあるが、この上映回数の確保に関しては、一度ルール作りをしないといけない問題だと思う。そうしないと、ある作品を見たいと思っても見られないことが日常化し、一層の観客離れにつながる大いなる危険性があるからだ。今のところ、この問題に関しては全く手つかず状態ではあるが、 配給、及び興行関係者の誰かが声を上げる時期に来ているのではないか。
もちろん、そうしたことは洋画ばかりに限ったことではない。だが、大ヒット作品が減っている洋画だからこそ、その“渦中“にはまり込んでしまうケースが目立つのだと言えよう。シネコンのシステムは、一つ、一つ考えるべきときに来たと、私は思っている。
(大高宏雄)