「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」が、今年に入って公開された洋画のなかで、もっとも成績のいいスタートを切った。3月10、11日の2日間で、全国動員23万7975人・興収3億0335万2950円を記録。「TIME/タイム」や「ドラゴン・タトゥーの女」の2日間成績を上回った。スクリーン数は464だった。
これは、1作目の「シャーロック・ホームズ」(2010年3月公開、最終興収21億6千万円)の9掛けほどの興収(2日間比較)で、意外な健闘ぶりと見る向きが多い。続編の典型的な数字の推移である1作目の6掛けから7掛けあたりが妥当との見方であったわけだが、結果は9掛けあたりと予想以上の出足となったのである。
英国の有名な推理原作を、CG映像を多く駆使したハリウッド流の派手なアクション風大作に仕立て上げた本作だが、この作品の色が相応の関心をもたれたと考えられる。20代、30代から年配層まで、客層の幅が広いのも特徴的だ。原作の知名度の高さと現代的かつ映像的な展開の味付けが、客層の広さに反映されたと見ることができる。
ここで一つ指摘できるのが、1作目が予想を超える浸透力をもっていたことだろう。普通に考えれば、まっとうな推理劇の形を大きく変えて、いわゆるハリウッド的な派手な装いの作品にしたことに対し、一過性的な人気が出たとしても、次の作品にはそれほどの強いインパクトを与えないとの見方が出ても、何らおかしくはなかった。それが、そうではなかったのである。
映画の価値の多様性を考える。「シャーロック・ホームズ」という題材に対して、テレビドラマのようなまっとうな推理劇もいいのであるが、その素直な映画化では、若い観客はおそらく動くことはないであろう。ハリウッド的な映像の見どころがあるからこそ、若い観客がある程度食いついたと言える。
ただここで面白いのが今回、年配者もまた、知名度のみに惹かれたのではなく、中身への相応の関心から動いたことだ。それは1作目ですでにうかがえ、よりスケールアップした2作目への関心の高さに裏打ちされた。有名原作のテイストを破壊するのではなく温存しつつ、アクション描写のつるべ打ちで観客の気持ちをつかむ。なかなか興味深い新展開のハリウッド作品と言うべきである。
(大高宏雄)