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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.70】
邦画安全パイ路線、米有名監督作品を凌駕

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.70】
邦画安全パイ路線、米有名監督作品を凌駕

2012年03月06日

 2012年春興行の第1弾作品の公開が始まった。早速、次のスタート成績を見ていただこう。

▽「映画ドラえもん のび太と奇跡の島~アニマル アドベンチャー」=動員48万5465人・興収5億5261万6950円(3月3、4日、359スクリーン)

▽「ライアーゲーム ― 再生(リボーン)―」=24万2188人・3億1470万3400円(3月3、4日、318スクリーン)

▽「ヒューゴの不思議な発明」=20万3028人・2億8096万6200円(3月1~4日、455スクリーン)

▽「戦火の馬」=13万4963人・1億5286万5500円(3月2~4日、332スクリーン)

 初日がバラバラなので、3月4日までの累計成績になっていることを考慮しても、東宝の2作品が、話題の洋画大作を凌駕したことがわかるだろう。邦画のアニメ、実写作品のシリーズものが、米映画の2大有名監督の話題作を上回ったのは、単純に言ってしまえば、未知の感動より見知っている安心感を選択した観客のほうが、多かったということである。

 「ドラえもん」は、前作(興収24億6千万円)の123.7%だった(土日興収対比)。ちなみに前作は、3月11日に起こった東日本大震災の大きな影響を公開1週目に受けた。ただ、スタートは普通時の公開であったわけで、そのときより24%ほど成績が良かったのは、今年がドラえもん生誕まであと100年といったちょっとした節目の年であったことや、人気子役を声優に起用した宣伝のそれぞれの話題性が大きかった。

 「ライアーゲーム~」は、テレビ局の圧倒的な宣伝展開が、若者が比較的関心を持ちやすいゲーム的な内容を広く浸透させた結果、若い層の集客率を高くすることができた。前作のヒット(23億6千万円)などが、本作の知名度を非常に高くしていることも大きな要素だ。

 「ヒューゴ~」のスタートは悪くはないが、中身そのものへの関心度が今一つ限定的であったことは否めない。宣伝云々というより、映画愛的な中身、素晴らしい映像表現など、本作の魅力そのものが、多くの一般層にまでは広がりにくい難しさがある。

 「戦火の馬」は、感動的な側面は見えたが、それが中身の浸透に広く行きつかなかった。行きついたとしても、どうだったか。とともに、スピルバーグ監督というネームバリューが、興行上においてはどんどん小さくなっていることも痛感する。

(大高宏雄)

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