9月23日から公開されてきた「モテキ」が、興収で20億円を超えた。超えたのは、11月3日であるが、11月6日現在では全国動員156万1070人・興収20億4927万2700円を記録している。一時は、20億円が難しいとの見方もあったが、よくぞ持ちこたえたといった感じである。
この「持ちこたえた」理由は、都会の劇場が相変わらず安定した成績を続けてきたことが大きい。とくに、トップ成績の新宿ピカデリーはすでに8000万円の興収を超え、9000万円に迫る勢いとなっている。1スクリーンでのこの成績は特筆すべきだろう。リピーターの来場者がかなり見受けられるとのことで、こうしたリピーターの存在も安定的な興行の下支えをしている。
都会中心、リピーターの存在から、10代、20代中心の観客中心といった興行のありようは、映画の中身がかなり特異であることを示す。そこでもっとも重要なのは、若者の関心事に風穴を開けたということであったと思う。彼らの関心事とは、ハナから “存在” しているわけではない。極めて移ろいやすい彼らの精神、感情の被膜のなかに位置する、薄らぼんやりと漂うかのような場所を目指して、映画の息吹を注入してくのである。
その息吹の力強さに、若者は自身の関心事を見出したと言えようか。「モテキ」とは、そうした作品なのである。それは、恋愛の形であろうし、もっとオーバーに言えば、生きていくためのちょっとした指針のようなものでもあろう。それらを、笑いという要素がオブラートに包んでくれる。「うーん、わかるな、その感じ」といった映画なのである。
20億円を超えた邦画は今年、「モテキ」で11本目になる。このうち、東宝配給作品は10本である。相変わらずの展開だとはいえ、「モテキ」以外の作品では、アニメが4本、シリーズもの(続編ものも含む)が5本などとなっている。いかに、邦画ヒット作のバリエーションが少ないか、一目瞭然であろう。
そのなかで、「モテキ」の革新性はとても貴重であると言える。次の「モテキ」は、果たしてどこから登場するか。いや、「モテキ」は「モテキ」。全く違うジャンル、作品が、どこから生まれるのか。人々の関心事を、見事にこじ開けてもらいたいと私は強く思う。
(大高宏雄)