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芸能界を混乱させて勇退した警察庁・安藤長官

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芸能界を混乱させて勇退した警察庁・安藤長官

2011年10月19日

 警察庁の安藤隆春長官が17日付で勇退した。

 霞が関――官僚の論理と言っても、余りにも都合がいいというか、タイミングのよすぎる行動だった。

 言うまでもなく、安藤長官と言えば、2年前の酒井法子の覚醒剤事件の時にも異例の談話を出してみたり、暴力団――特に弘道会(山口組)の弱体化を掲げたりしてきた。10月1日から全国47都道府県全てで施行された「暴力団排除条例」でも旗振りをしていた。この安藤長官が勇退することになったのだ。もちろん、これは任期満了ということらしいが、ご都合主義的な感は否めない。要するに、騒ぐだけ騒いで、着地点も出さないままトンズラ…そんな安藤長官の退任劇だった。

 だいたい、10月1日から施行された「暴力団排除条例」って一体、何だったのか? これまで日本相撲協会の賭博をアブリ出したかと思ったら、次は島田紳助を芸能界から追放して、その仕上げは大みそか恒例の「NHK紅白歌合戦」の出場者を混乱させようという…。

 前回も記したが、そもそもが「紅白」の応援団として、いち早くAKB48とテリー伊藤を起用することだけは発表したが、出場歌手については選考を徹底とし、万が一でも暴力団との関係が判明した場合は「出場を解除する」姿勢をNHKの松本正之会長に明らかにさせた程度。それで、安藤長官は「暴力団排除条例」を国民にアピールでも出来たと思っているのだろうか? だとしたら、余りにも情けない。

 だいたい芸能界を電撃引退したものの、その後、暴力団との不適切な関係がクローズアップされた島田紳助さん。ある意味で、今回の「暴力団排除条例」のキャンペーンに利用された格好だが、冷静に考えて、この一連の流れというのは芸能界やスポーツ界だけが暴力団と密接な関係にあるように見せるだけの手法にしか見ることが出来ず、正直言って疑問を感じた。

 そもそも「暴力団を排除する」なんて、そんなの綺麗事に過ぎない。そんなこと言ったって、現実には暴力団の撲滅なんかに結びつかない事なんて小学生にだって分かる。いやいや、実のところ暴力団が撲滅なんて騒いではいるが、いなくなってしまって本当に困るのは実は警察なのかもしれない…。

 それに、常識的に考えたって「排除する」ということは、結果として暴力団を、より地下組織化させることだって警察は十分に心得ている。所詮は警察も官僚である。「暴力団排除」とか騒ぐだけ騒いで、来年度の予算をガッポリ増やそうとしているのか、あるいは、警察組織を「防衛省」みたいに「警察省」にでも格上げさせたいのか? そんなところにも、ご都合主義な思惑がプンプンする。ま、安藤長官が騒いだのは実は自身の天下り先でも探していた、なんてことだって十分に考えられる。それこそ、エンタテイメント関係に天下ったら笑い話にもならないだろう。

 いずれにしても、安藤長官は退任して、後任には片桐裕次長が昇格すると言う。新体制でも現状は引き継がれると言うが、そもそも「暴力団排除条例」というのは、「暴力団撲滅」という言葉の下に、ロクな論議もされないまま施行されたものに過ぎず、まさに欠陥条例の極みというしかない。

(渡邉裕二)

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