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結局「暴力団排除条例」は芸能界を混乱させるだけ

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結局「暴力団排除条例」は芸能界を混乱させるだけ

2011年10月12日
 10月1日、東京都と沖縄県で「暴力団排除条例」が施行されたことで、全国47都道府県全てで、この条例が完全施行された。この施行で、最も注目されていたのが大みそか恒例の「NHK紅白歌合戦」だった。

 「紅白」の応援団として、いち早くAKB48とテリー伊藤の起用が発表されたが、出場歌手については選考を徹底し、万が一でも暴力団との関係が判明した場合は「出場を解除する」姿勢をNHKの松本正之会長が明らかにした。

 芸能界を電撃引退したものの、その後、暴力団との不適切な関係がクローズアップされた島田紳助さん。ある意味で、今回の「暴力団排除条例」のキャンペーンに利用された格好だが、冷静に見まわして、芸能界やスポーツ、エンタテインメント界だけが暴力団と密接な関係にあるような一連の流れには、正直言って疑問を感じる。

 もちろん、暴力団など反社会的な組織は撲滅しなければならないだろう。しかし、その一方で「実は、パチンコ業界だけではなく、スポーツ・芸能・エンタテインメント業界、さらには放送業界にも警察官僚の天下り先を確保しようとしているんじゃないか」といった声まで出ている。

 確かに、暴力団を排除するといっても、それが撲滅に結びつかない事なんて誰にでも分かっている。いやいや、完全に撲滅してしまったら困るのは実は警察なのかもしれない…。

 そもそも「排除する」ということは、結果として暴力団を、より地下組織化させるだけである。そのことは「暴対法」を施行した結果でも明らかになっている。

 例えば、08年3月16日に東京・西新宿で起こった鉄バット撲殺事件。これは「関東連合」の仕業と言われている。

 この鉄バット撲殺事件とは、渋谷区本町の会社員・金剛弘さん(当時32歳)が数人の男に襲われ、脳挫傷で亡くなった事件である。犯人は、目出し帽をかぶるなどしていた。目撃者情報では、金さんは「ごめんなさい」と泣きながら懇願したが、男たちは「殺せ、殺せ」という叫び声を上げながら鉄バットでボコボコにしたらしい。しかも、その後、亡くなった金さんが、タレントの広末涼子の元夫や、女優の宮崎あおいの夫とも親交があったことが発覚し芸能界でも話題になっていた。しかも、この「関東連合」の元メンバーは、東京・六本木で起こった歌舞伎俳優・海老蔵の殴打事件にも関与していたことでも知られている。それだけではない。その関係筋は、元横綱・朝青龍の暴力事件とも関わっていたのだ。言うまでもなく「関東連合」による事件は、激増している。

 ところが「関東連合」というのは、実は実態がない。基本的に、暴走族やチーマーだった若者が加わっていて、いわゆる暴力団の組員ではない。彼らは「暴力団に入ってもメリットがない」と思っているような連中だ。しかし、そういった若者はクラブを経営したり、芸能プロダクションやAV系の仕事をしたり、キャバクラなども経営している。とにかく賢くて頭がいい。もちろん、警察も何もしていないわけじゃないだろが、暴力団ではないので取り締まるにも限界がある。現実にはお手上げ状態のようだ。が、現実には深刻な状態になっている。

 このことからも今回の「暴力団排除条例」の施行というのは、結果として同じことが繰り返されていくに違いない。

 NHKの松本会長は、もし暴力団との不適切な関係があったら「(「紅白」出場を)解除することもある」とも明言しているが、どう見ても暴力団を排除しているのか、歌手やタレントなど芸能人を排除しているのかサッパリわからない。そもそもNHKの言うところの「不適切な関係」って一体、何なのか?

 いずれにしても、現実に照らし合わせると「暴力団排除条例」というのは、「暴力団撲滅」という言葉の下に、大した論議もされないまま施行されたものに過ぎず、まさに欠陥条例の極み。単に芸能界を混乱させるだけの条例に過ぎないと思うのだが…。

(渡邉裕二)

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