日本レコード協会が公表する「レコード生産実績」で、今年1月から8月のCDの売上げは前年に比べて6%減少した。去年も「悪い悪い」と言っていたが、今年は、さらに悪化したことになる。要は、CDが売れないのだ。
新ロックバンド “スーパーへヴィ” を結成して、アルバムを発売したローリング・ストーンズのミック・ジャガー。完成したCDを見たミックは「CDを見るのも、これが最後になるかもしれないな」なんて苦笑いしていた。僕は、笑って受け止めたが、正直言って現実を直視した言葉だった。
すでに、米国はCDは壊滅状態。英国でもCDショップは無くなりつつあるほどだ。そういった意味で考えたら日本なんて、もはや最後の砦かもしれない。とにかく、音楽の聴き方は「デジタル配信」に移行していることは紛れもない事実だろう。しかし、そのデジタル配信でさえ、ここ最近は減少傾向にある。これは、おそらく「違法デジタル配信」の横行が影響しているのだと思う。
この業界に身を置く者として「これは由々しき事態だ!」…と思うのだが、冷静に考えて、魅力ある曲が少なくなったことも事実だ。
だいたい、何故、CDが売れないか? 早い話が「買ってまで聴きたいCDがない」ということだろう。本当に聴きたい曲なら、少なくとも「デジタル配信」だけでは満足できないはずで、CDが欲しくなるはずである。そう思いたい。
もちろん、AKB48を代表するジャリタレのように、何種類もの特典や、さらに握手券までつけ1人に何枚も売りつける方法もあるが、そんなの音楽を売っていることにはならない。
AKB48のプロデューサーである秋元康。先日放送されたNHKの番組で「何となくいいね…と言われるものがいい」と言っていた。今は「軽い感じのものが求められる時代」って言いたいのだろうか?ま、何をやっても売れればいい。ビジネスとして成立したら、それが「正義」なのだろう。でも、そんなことばかりやっていたら、音楽業界は一体どうなってしまうのか? 一抹の不安も…。
だいたい、人気投票で歌う人を決めるとか…。究極はジャンケンで歌う人を決めちゃうなんて、正直言って世の中を舐めちゃいないか? それって極端な噺がAKB48なら誰が歌ったっていいって話だろう。ま、AKB48のキャラクター商売って言ったらいいのかもしれないけど…。しかし、その一方では、歌手を目指して日夜、頑張っている人もいる。よく、テレビのオーディションのような番組なんかを見ていると、審査員から「歌に気持ちが入っていない」とか「もっと基礎から勉強しないと…」なんて酷評されながらもプロを目指して本気で歌っている人がいるかと思ったら、反面、ジャンケンポンで…なんて。確かに、それが世の中だとしても、ちょっと「アンフェア」だろう。
もちろん、色々なアーティストがいて、音楽があって、その中から自由にチョイス出来るような環境があればいいのだけれど、今の世の中、人気投票やジャンケンポンで選ぶように、最近の音楽産業の殆どが「他力本願」なんじゃないかと思えてくる。とにかく、与えられた情報の中でしか動かない。アイドルと言えばアイドル、アニソンと言えばアニソン、K-POPと言ったらK-POPに流れてしまう。そんなことじゃ、本当にいいものが埋もれちゃうかもしれないだろう。
そろそろ実力派、本物志向のアーティスト、音楽に対して本気で力を入れるべきだろう。
いい加減「素人集団は結構!」と思っているユーザーも多いはずである。正直言って音楽業界を盛り上げるには、もはや、制作現場を「プロ集団化」するしかないと思うのだが…。
(渡邉裕二)