島田紳助の引退騒動で痛感したこと…
2011年08月31日
島田紳助が芸能界を引退した騒動が今週になってからも尾を引いている。
今回の騒動は、所属事務所の吉本興業から暴力団関係者との関係を指摘されたことだった。が、だからと言って「じゃ、責任を取って引退する」というのは余りにも突飛過ぎはしないか。当然、誰だって「何か別の事情があるに違いない」と思うだろう。しかし、それが、何なのか? 紳助の真意は未だハッキリしない。
そういった中で、ここにきて紳助と暴力団関係者とのメールが公表されたり、これまでのズブズブの関係が暴露されるなど、報道の流れは「何で引退したのか?」という素朴な疑問とは別の方向に突っ走っていっているような感じがしてならない。もちろん、紳助には「逮捕説」が囁かれているだけに、今後、そういった“論点”が一致するのかもしれないが…。
それにしても、痛感したのは、いかに紳助がメディアから嫌われていたかということである。いや、メディアだけではない。テレビの視聴者の間からも「消えてせいせいした」「顔を見るのも嫌だった」なんて声がソロゾロ。今や紳助を擁護するのは、それこそ紳助のお陰でテレビに出てきたタレントの面々ぐらいか正直言って、嫌われ方は半端じゃなかった。
もっとも魑魅魍魎とした芸能界、ある意味では紳助ぐらい破天荒でアクがなければやっていけないのかもしれないとも思ったりする。
しかし、理解できないのは、紳助と暴力団との関係でのバッシングである。まさに、この部分は警察の思惑通りと言ったところ。
確かに、暴力団との交際は反社会的と言われても仕方がない。時代の感情論からしたら批判されるべきことだろう。しかし、芸能界と暴力団の関係は誰だって知っている、感じているものはあったはずだ。こんなことを書くと「何だ!コイツは!!」と言われるかもしれないが、世の中、そんなキレイごとばかりではない。
10月1日から全国47都道府県で「暴力団排除条例」が施行される。今回の紳助問題は、ある意味、施行前のキャンペーンに吉本興業と紳助が利用されたようにも感じる。だいたい「暴力団と付き合うな」と言ったら、理屈的に言って親兄弟、親族に、その関係者がいる芸能人はどうするの? それが認定されたら芸能界から追放なの? そういったことは芸能関係に限らず、スポーツ界にだってあるだろう。もしかしたら政治家だって…。
この国はおかしい。例えば、覚せい剤にしても「覚せい剤取締法違反」とか言って内偵したり、現行犯で逮捕して社会的な制裁をするが、その後は知らん顔。とにかくメンタルな部分での対策は各自任せだ。今回の「暴力団排除」も同じ。「(暴力団を)排除しろ排除しろ」と騒ぐが、そういった部分での受け皿は何も用意されていない。それじゃ、単に暴力団を追い込むだけの話だろう。そう考えたら、こんな無責任な条例はない。余りに短絡的過ぎる
「暴力団追放」と言えば聞こえはいいが、実にいい加減と言わざるを得ない。
紳助の騒動も、どこかおかしい。もちろん、暴力団との関係の中で何か犯罪性のある事例も多々あったのかもしれない。だったら、その部分を捜査すればいいだけの話だ。それを、いくら暴力団関係者が相手だったとは言え、個人のメールのやり取りを公表すると言うのは如何なものか? そもそも、当人だって削除してしまっているようなメールのやり取りを入手、保存しているというのは携帯会社か、その情報を知りえるだろう国家捜査機関しかない。しかも、犯罪性のないメールまで公表するのはプライバシーの侵害なんて話じゃない。これは明らかな犯罪行為だ。
個人メールについて「携帯会社は10年間保存する」らしいが、今回の紳助の芸能界引退騒動で、この国が、実は中国や北朝鮮なんかよりよっぽど恐ろしい国に変貌していることを改めて痛感した。
(渡邉裕二)