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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.34

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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.34

2011年06月21日

◎東宝、東映、昨年前半実績上回るも問題点はある

 東日本大震災から100日以上が経ち、休館していた劇場(全国で9サイト)も、夏興行に向けて再開の見通しが立ってきた。ただ興行全体を見ると、相変わらず厳しい局面が続いている。大震災の影響がもちろんあったとは思うが、その要因は、やはり作品そのものにかなりの部分負うところが大きい。

 なかでちょっと驚いたのが、東宝と東映の成績である。この1~5月累計の興収で、東宝が256億0084万円。東映が70億3351万円を記録した。前年の同時期比較では、前者が119.9%。後者が121.2%となり、ともに上昇したのである。

 東宝の成績は、いつものことだが、盤石であった。昨年の12月からこの5月までに公開された作品で、最終興収が10億円を超えたのが14本あった。さらに、6月中旬までに公開された作品では、15本から16本にまで増える可能性が高い。同社の昨年の上半期は、10億円を超えた作品は9本だったから、大幅増ということになる。

 東映は、正月の「相棒 ―劇場版 II―」(32億円)はじめ、「プリキュア」などの定番アニメに「仮面ライダー」などが安定感を見せたことが大きい。この5月までに公開された作品では、10億円を超えたのが3本。6月公開作品まででは、10億円を超えると見られるのがあと1本増えるかもしれない。昨年の4本とはあまり変わらないが、作品数が増えたことが全体の興収アップを促したと言える。

 ただ、問題もある、東宝は、5月以降に公開された作品で、最終20億円を超える見通しが立つものは1本もなかった。これは、企画の安全パイ的な要素が、観客層の広がりにつながらなかったからだろう。東宝の場合は、興収のハードルが他社より数段高い。作品にもよるが、目標数字に届かない作品が増えてくると、今後の成績の伸びが鈍化してしまうのである。

 東映は、実写作品が振るわないのが大問題だろう。「ジーン・ワルツ」「わさお」「これでいいのだ!!~」などで、しっかりとその反省点を討議すべきだろう。さらに、定番アニメ、「仮面ライダー」「スーパー戦隊シリーズ」などの公開本数が多すぎることも、今後にどういった影響が出てくるか。観客がしっかりとついている貴重な作品群なのだから、大切に製作、公開していくことも視野に入れてほしいと思う。

(大高宏雄)

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