◎「もしドラ」の興行はいささか物足りない
略称「もしドラ」が、6月12日現在で全国動員35万9227人・興収4億4452万7900円を記録した。この11、12日は12万0012人・1億4789万7500円。これは、先週土日(4、5日)の81・8%の興収だった。さあ、この興行展開をどう見るか。
最終で10億円前後が一つの目安となろう。東宝配給作品でなければ及第点を上げてもいいが、東宝配給作品である。いささか物足りないというのが、まず言えるのではないかと思う。同じ日に公開された北川景子、向井理出演の「パラダイス・キス」の興行のほうが、現段階では「もしドラ」を上回っているというのも、物足りなさを証明するとも言っていい。
人気グループ所属の前田敦子の初主演作にして、べストセラー原作の映画化。昔懐かしいアイドル映画的な装いのもと、今旬でもある題材とのドッキングである。客層が異色だった。小学生から大学生あたりまでの10代の若い層が多かったのである。といって、その層が大きく膨らんでいるわけではない。20、30代の男性が少ないことも、特徴的であった。
昔と違って、今のアイドルはファン層の広がりに限界がある。CDの売上、マスコミ登場の頻度などが人気のバロメーターではあるのだが、その実績があったとしても、かつてのような国民が誰でも知っているアイドルとは一線を画す。これは、いい悪いではない。人気のありようが、変わったのである。そうしたアイドル状況が、映画興行にも反映される。
現在、アイドル映画的な作りをもっていると、それは限定的な客層を予想しないといけない。それを覆すのが、題材のタイムリー性である。「もしドラ」は、タイムリー性で勝負したとは思うが、主演者のアイドル性が前面に出過ぎなかったか。それが、10代の観客が多い一つの理由であったと言える。
だとしたら、企画の吟味をもっと問い詰めても良かったのではないかと思う。これからでは、「もしドラ」の中身に関心がありそうな人たちが、多くは見られない点をしっかりと吟味してもらいたい。
アイドル映画は、非常にポテンシャルがあると思う。少し前より、今のほうが明らかにある。だからこそ、主演者と題材の絶妙なバランスが必要になってくるのだ。「もしドラ」はだから、非常にいいヒントを関係者に与えたのだと思う。
(大高宏雄)