大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.27
2011年04月26日
◎「GANTZ」新作好調で、2部作製作作品へ注文
「GNATZ PERFECT ANSWER」は、4月23、24日の2日間で、全国動員42万3675人・興収5億5161万0800円を記録した、これは、「GANTZ」のスタート2日間と比較して、93・0%であった。健闘したと、私は思う。さて、この2部作、あるいは3部作製作作品。邦画の製作、公開の形式において、ほぼ定着したと見ていい。
▽日本テレビ「デスノート 前篇」=28億5千万円(2006年6月)、「デスノート the Last name」=52億円(同年11月)
▽日本テレビ「20世紀少年 第1章」=39億5千万円(2008年8月)、「20世紀少年 第二章 最後の希望」=30億1千万円(2009年1月)、「20世紀少年 最終章 ぼくらの旗」=44億1千万円(同年8月)
▽フジテレビ「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」=41億円(2009年12月)、「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」=37億2千万円(2010年4月)
▽フジテレビ「SP 野望篇」=36億3千万円(2010年10月)、「SP 革命篇」=30~32億円(2011年3月)
▽日本テレビ「GANTZ」=34~35億円(2011年1月)、「GANTZ~」=推定35~40億円(同年4月)
長くなったが、これが主要な邦画の2部作、3部作製作作品の興行成績である。この安定感は見事としか言いようがない。どこかの昔のCMで、“一粒で2度おいしい”というのがあったが、まさにそれである。これは06年以降、テレビ局主導の映画製作の一つの形を決定づけたとも言えよう。
これに対する私の持論は、こうだ。物語の長い形式をもつコミック原作の場合は百歩譲って、こうした製作の形もありえよう。単純に、1本で収められないということもある。しかし、「2度おいしい」といった“利益優先主義“が前面に出ると、まずい。
果たして、本当に2部作にする必然性があるのか。そこを吟味せずして、いたずらに2部作形式にもっていっても、それは作品の粗製乱造、マーケティングの混乱に行き着くだろうというのが、私が考えていることである。
コミック原作の映画化が多くなった昨今の邦画事情では、この2部作、3部作形式はある意味、避けられないことなのかもしれない。しかし、吟味は必要である。中身の充実感を最優先してほしい。2部作、3部作の必然性が、企画、製作の過程でどこまで煮詰められているか。この点だけは、製作関係者にお願いしたいところである。
(大高宏雄)