◎「SP 革命篇」、春興行を制す方向で健闘
大震災後―。復興への長き道のり、全国的な自粛の嵐に様々なマイナス要因が加味され、日本経済の先行きは全く不透明である。映画界も同じであるが、徐々に劇場の再開も始まり、現在では33サイトにまで休館の劇場は減少した。前回も記したように、少しずつ観客も戻ってきているようだ。
この春興行。最終的な興収見込みでは、トップは「SP 革命篇」となる公算が高い。4月3日現在では、興収20億5822万円を記録。最終的には、30億円を超えるとの見通しが立っている。
2位を争うのが、「ナルニア国物語 第3章:アスラン王と魔法の島」と「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団~」、そして「塔の上のラプンツェル」の3本。それぞれ、最終20億円台の前半から半ばあたりで推移する見通しだ。
さて、トップ見込みの「SP 革命篇」であるが、前作の「SP 野望篇」は、最終興収が36億3千万円だった。今の勢いをもってすれば、「SP 革命篇」は40億円も十分視野に入ったのだが、大震災後のこの現状では、前作の80%強といったあたりに落ち着きそうだ。といっても、これはたいした成績である。2部作製作の底力をいかんなく発揮したと言っていい。
2部作製作といえば、「GANTZ」(最終34億円見込み)も同じである。「SP」と「GANTZ」。ともにテレビ局が力を入れた2部作製作作品であるが、両作品の俳優の布陣を比較してみると、「SP」の岡田准一の人気ぶりが特筆されると思う。これは、岡田の人気が女性層のなかで、かなり広範囲に及んでいることが大きい。
題材も、後押ししたのだろう。「GANTZ」の場合は、人気コミック原作の映画化という点が、ある程度観客層の幅を狭めたと推測できる。本来なら、もっとヒットしていいのだ。つまり、「SP」の岡田は、題材が彼の人気とうまくマッチし、幅広い層の女性の関心を引き出した。とくにその題材が、アクションものであった点に、企画のユニークさがあったと言えるだろう。
ただ個人的には、以前にも別の媒体で言ったが、私は2部作製作のあり方には疑問をもつ場合もある。ドラマの間延びが、いかんともし難いからだ。1作品のなかで、ある程度完結できないものか。企画は評価できるだけに、関係者には一考をお願いしたいところである。
(大高宏雄)