【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.159】
“東宝”が、興行ランキングから消えた
2014年07月17日
ありえないことが起こった。興行通信社が毎週発表している週末の興行ランキング(7月12、13日)の10位内に、東宝の配給作品が、1本も入っていなかったのである。これは、前代未聞ではないか。毎週、何本もの東宝配給作品が、さも当然といった趣で10位内に入っているのが、これまでの興行ランキングのいわば常識だった。それが、その週は“東宝”の字が、こつ然と消えた。
予兆はあった。先々週の7月5、6日のランキングでも、純然たる東宝配給作品は1本もなく、東宝映像事業部(ODS)のAKB48ドキュメンタリーだけが10位。さらに、その前の週(6月28、29日)では、「春を背負って」が7位。東宝映像事業部の「攻殻機動隊ARISE~」が10位だった。徐々に、東宝配給作品は減っていたのである。
この期間、東宝の新作が1本もなかったというのも、もちろん大きな理由なのだが、それにしても、これは驚きである。たとえ新作がなくても、続映作品がしっかりとランキングに居座るのが東宝の常であり、その“常識”が覆った。
逆に、松竹が好調さを持続させている。新作「好きっていいなよ。」が、初登場2位。ヒット中の「超高速!参勤交代」が5位につけ、邦画の1位、2位を、何と松竹の配給作品が占めたのである。これも、驚きである。
ちなみに、「好きっていいなよ。」は、7月12、13日の2日間で、全国動員13万5801人・興収1億5959万0500円を記録した。これは、上半期の東宝配給作品の注目作である「銀の匙~」「WOOD JOB~」「万能鑑定士Q~」「春を背負って」などのスタート成績を上回る。根強い支持者をもつ少女コミック原作の純愛映画とはいえ、さきの東宝配給作品を凌いだのは、全く意外であった。
東宝に話を戻せば、この上半期、興収で369億円を記録し、同社の上半期の歴代新記録を樹立した。これだけで判断すれば、例年と同じく今年もまた順風満帆のように見えるが、実は邦画の実写作品の低迷が、この3週間ほどのランキングに反映されているのである。新作はなくても、続映中の実写作品の成績が健闘していれば、ランキング内に1本もないなんてことは、これまでの東宝からしたらありえない。だからこれは、いかに厳しい成績の作品が連続して登場したかの証明でもあろう。
今週から、ジブリの新作「思い出マーニー」と「ポケモン」、来週から「GODZILLA」が公開されるので、またまた東宝は1、2位あたりを独占してくるだろう。そうなると、再び東宝の独壇場ということになるかもしれないが、この3週間ほどのランキングから、東宝が反省すべき点は非常に多いのだと思う。
(大高宏雄)