アニメの夏興行である。興行通信社が発表している週末興行ランキングによると、7月27、28日の土日の成績で、上位(動員)10本のうち、7本がアニメだった。今のところの集中度であろうが、これは非常に珍しい。
こんなことを言う人がいた。「今まで映画界は、邦画と洋画の年間の興収比率を出してきたが、これからはアニメと実写作品(邦画、洋画の)の比率を出すべきではないか」。
これは、冗談として聞き流すのではなく、ぜひともそうしてほしい。もはや、邦画だ洋画だ、ではなく、アニメだ実写だ、という時代なのである。まあ、その言い方は半分冗談であるが、そのシェアがもし出てくれば、日本独特の高いアニメシェアに、世界は仰天するのではないか。
さて、そのアニメの1、2位は、「風立ちぬ」と「モンスターズ・ユニバーシティ」である。前者は、7月28日時点で全国動員226万0348人・興収28億5356万4000円。後者は、今日7月31日の時点で、おそらく50億円を超えるとみられる。この成績から、夏興行前半戦は、「風立ちぬ」と「モンスターズ~」の一騎打ち的な様相を呈していると言えよう。
この2作品の特長は、子どもたちや学生たちの夏休み以降、どんどん興行の地力を出していることだ。「風立ちぬ」は、これまでのジブリ作品のように、子どもたちを含むファミリー層主体とは違って、20代、30代から年配者までの実に幅広い客層だが、その層にして、夏休み以降の興行の地力の度合いは非常に強いのである。
ジブリとピクサー。この2社の会社のアニメは、従来のブランド性にクォリティの良さが加わると、これまでがそうであったように、興行は爆発する。夏休みの初っ端に、その傾向がはっきりと現れた。もし今年、この2本が邦画と洋画を含めた興収の1位と2位になれば(あくまで推測だが)、ジブリ、ピクサー揃踏みとなり、このワンツーは過去前例がない。
さて、実写作品で健闘しているのが、アニメ上位3本(あと1本は「ポケモン」)の次に位置した「終戦のエンペラー」である。7月27、28日の2日間で、全国動員15万7964人・1億8316万6700円。これは、最終で10億円以上、15億円あたりまで狙える出足となった。
5週目の「真夏の方程式」を上回っての初登場4位は、たいしたものである。こちらは、題材への関心度の高まりであろう。当然ながら、年配者が中心であるが、その層がしっかり集客できると、爆発こそしないものの、興行は大いに安定する。
(大高宏雄)