3月になった。この1、2月、映画興行は昨年を上回る成績となっている。大手、中堅の邦画、洋画配給会社13社の1月累計興収は、146億0627万円を記録し、これは昨年の1月と比べて113%だった。2月の結果はまだ出ていないが、あるシネコンでは前年対比で約20%増になっているというから、全体でも昨年実績を超えているとの推測ができる。1、2月を見た限りでは、2013年はまずまずのスタートと言っていい。
この3月1日からは、「フライト」と「ジャンゴ 繋がれざる者」が公開された。「フライト」(321スクリーン)は1日から3日までの3日間で、全国動員19万9358人・興収2億2596万2750円。「ジャンゴ~」(148スクリーン)は同じく3日間で、7万7998人・9230万9900円だった。
「フライト」は順調なスタートだと思う。まず、タイトルが実にわかりやすいことがいい。ただ、予告編などで喧伝されていた飛行機落下をめぐる娯楽大作的なスペクタクルものとは、中身自体はかなり違う。より主人公に即したドラマ部分が濃厚で、そのあたりをぼかしながら、娯楽色をより強調した点が、宣伝のお手柄である。
だから、そのあたりに敏感な女性層が意外に目立った。デンゼル・ワシントンの主演作というと、どうしても男性観客中心になるのに、本作はそうならなかった。宣伝が、相応に浸透した結果だろう。ただ、そのドラマ部分は、今後の展開にどんな影響を与えていくか。
「ジャンゴ~」は、148スクリーン公開だが、劇場数はこれがすべてではなく、4月6日からさらに70スクリーンほどで公開が予定されている。これは当初、大都市圏とその周辺県での宣伝浸透が集中的に行われためだ。つまり、宣伝がいきわたっているところと、そうでないところがあり、それを見越しての配給側のブッキングだった。
これは、タランティーノ監督の前作「イングロリアス・バスターズ」(最終興収6億5千万円)の結果を踏まえたからだ。「イングロリアス~」は、宣伝費からすると、かなり厳しい成績だった。だから、今回は極力 “経費” を抑えたのである。そこまでしないと、たとえこの監督のバリューが相応であっても、今の洋画興行は簡単にはいかない。
(大高宏雄)