【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.53】
三谷ブランド健在も、ぎりぎりの及第点か
2011年11月01日
今年も、あと2カ月を残すのみとなった。これまで、当欄で何度もお伝えしたように、映画興行は今年大変な状況が続いてきた。その状況は、今になっても変化はない。少し早いが、今年の映画界の大勢はおおよそ決したと言っていい。年間興収で、昨年維持した2000億円を下回り、まさに“緊急事態”である。
さて、この10月28、29日には。「ステキな金縛り」「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」「映画スイートプリキュア~」などがスタートしたが、今一つ興行が突き抜けない。
「ステキな金縛り」は2日間で、動員39万0102人・興収5億0334万2450円を記録した。大ヒットではあるが、三谷監督作品は、これまでの実績から目標がかなり高い。それからすると、幾分足りない見方もできるが、「猿の惑星」のときも言ったように、ぎりぎりの及第点のスタートと判断できる。
ただ、若い層も集客しており、幅広い客層であるから、今後の展開は注目である。予想以上の粘り腰で、意外な数字の伸びを果たすかもしれない。今のところは、最終40億円が一つの目安となろう。
「三銃士~」は3日間で、25万6588人・3億7330万8500円を記録した。スクリーン数は721。このスクリーン数からすると、幾分物足りない成績であろう。ただこちらも、とくに日曜になると若い層が増え、幅広い客層になったから、今後にある程度の期待を残したと言える。3D版の興収シェアは67・1%。動員シェアは61・7%である、これは3D版への関心が、少し弱まっていることを表し、最近の3D版の興行と似た傾向になっている。
「映画スイートプリキュア~」は2日間で、18万1020人・1億9741万8400円を記録。昨年秋の「映画ハートキャッチプリキュア!~」(最終9億3千万円)の97%の興収だから、安定感抜群である。以上、この3作品が、10月29、30日の週末興行ランキングのトップ3ということになる。
その週末ランキングで大いに気になったのが、2週目に入った「カウボーイ&エイリアン」や「スマグラー~」の落ち込み具合である、極端な興収減であり、「スマグラー~」に至っては、すでに10位圏外にはじき出された。こうした2週目、3週目あたりでの落ち込みもまた、今年の映画興行の厳しさを象徴している。複合的な様々な負の要素が、今年の映画界に覆いかぶさってきたのである。
(大高宏雄)